西川日産社長の報酬上乗せ問題 3つのポイント

日産の選択
3ポイントまとめ
2019/9/5 11:15
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日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)が株価と連動した役員報酬を受け取る制度を使い、社内規定に違反して不当に報酬を上乗せした疑いがあることがわかりました。6月の株主総会で再任され、業績低迷や仏ルノーとの資本関係の見直しへの対応に本腰を入れる矢先に再びガバナンス(企業統治)不全が露呈したことで、西川社長の求心力の低下は免れません。ポイントを整理します。

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(1)株価連動型インセンティブ受領権とは

問題となっている報酬制度が「株価連動型インセンティブ受領権(SAR)」です。業績連動報酬の一つで、企業価値を意識した経営を行ってもらう目的で導入されています。業績連動報酬で一般的な「ストックオプション」は、自社の株式を一定の価格で購入できる権利を割り当てますが、SARは株式をいったん取得したとみなし、事前に決めた期日に株価が上昇していたら、差額を金銭で支払います。西川社長は2013年5月に権利の行使日を決めましたが、その後に株価が上がったため、行使日を遅らせ、当初より多くの利益を得たとされています。また西川社長以外にも行使日を変えた幹部がいた可能性があります。

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(2)なぜガバナンスが機能しないのか

今回の問題は元会長カルロス・ゴーン被告の時代に起こっていますが、これからの開示・説明によっては、現在のガバナンス体制への疑義が生じる可能性もあります。日産はゴーン被告に権限が集まり過ぎた反省から、6月に「委員会設置会社」に移行しました。取締役の過半を社外取締役としたうえで、経営を左右する役員の指名と報酬の決定、業務監査を複数の取締役から成る委員会に委ねました。今回の問題も監査委員会が調査を主導したとみられます。

結果を公表するかどうかは明らかにしていませんが、経営トップが関わる問題だけに、法令や社内規則に対する適合性や経緯、処分の妥当性について社外にもしっかりと説明しなければなりません。企業経営に外の視点を取り入れ、中立性のある判断を下せるのか。ガバナンス改革の柱でもある委員会設置会社の実効性が問われています。

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(3)日産の経営にも打撃

6月に発足した西川社長率いる新経営陣にとっても、ガバナンス問題の再燃は大きな痛手です。西川社長は最優先に取り組む事項に「ガバナンス改善」を挙げ、ゴーン被告との違いをアピールしてきました。「ゴーン時代」との決別を求心力としていただけに、自身の責任を問われかねません。足元の状況も切迫しています。7月に発表した2019年4~6月期決算では連結営業利益が前年同期から99%減りました。累計で1万2500人の人員削減を行い止血を急ぐ方針を示しましたが、労使間での本格的な協議はこれからです。求心力が低下すれば、業績改善の特効薬とするリストラの実施に遅れが生じかねません。仏ルノーとの間でも、資本見直し問題など積年の課題に対処する時期を迎えています。同社のティエリー・ボロレCEOは問題の調査にあたった日産の監査委員会メンバーでもあります。両社のトップ同士の信頼関係が重要な局面でのガバナンス問題再発は、ルノー側に西川社長の指導力への不信感を生みかねません。改善の兆しを見せていた両社の関係が再び冷え込めば、資本関係の見直しの協議を進めることすらできなくなる可能性もあります。

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