ロシア、インドに接近 首脳会談、経済関係強化で合意
欧米と関係悪化「アジア・シフト」加速

2019/9/4 17:42
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【ウラジオストク=石川陽平】ロシアのプーチン大統領は4日、極東ウラジオストクでインドのモディ首相と会談し、戦略的パートナー関係を強化する共同声明を発表した。ロシアは欧米との関係が悪化するなか、中国に続いてインドにも接近し「アジア・シフト」を加速する。インド側もカシミール問題で中国やパキスタンとの関係が悪化しており、ロシアの協力に期待を寄せる。

造船所を視察するロシアのプーチン大統領(右)とインドのモディ首相(4日、ウラジオストク)=ロイター

会談後の記者会見でプーチン大統領は、ロシアが主導する旧ソ連の共同経済圏とインドとの自由貿易協定を早期に締結させる考えを示し、「物流の多様化に向け、さらなる可能性が開かれる」と強調した。モディ首相も会談で「印ロ関係を新たな水準に引き上げることで合意した」と語った。

モディ首相は4~6日にウラジオストクで開かれている国際会議「東方経済フォーラム」に合わせてロシアを公式訪問した。

4日に採択した共同声明では、経済協力について(1)ロ印の貿易額を現在の年間約110億ドル(約1兆1700億円)から2025年までに300億ドルに増やす(2)民間航空機のインドでの共同生産を検討する(3)新たな長期的な軍事技術協力の計画策定を急ぐ――ことを盛り込んだ。

共同声明には国際問題での協力も明記した。イランとの貿易と経済協力を続けることや、宇宙での軍拡競争への懸念を表明した。イランと激しく対立し、宇宙空間の軍事利用も急ぐ米国をけん制する内容だ。ロシアは防空ミサイルシステム「S400」のインドへの納入でも合意しており、米国の反発を招いた。

ロ印の経済関係では、特に石油ガスの共同開発とインドへの輸出が有望視される。プーチン大統領は記者会見で、政府系石油会社ロスネフチが計画する液化天然ガス(LNG)事業「極東LNG」と、民間の天然ガス会社ノバテクが主導し、三井物産も参加を決めた北極圏のLNG事業「アークティック2」にインドを招待した。

14年のウクライナ南部クリミア半島の併合を機に欧米から厳しい制裁を受けるロシアは、アジア外交に活路を見いだしている。伝統的に関係の深い欧州連合(EU)諸国との貿易額が09年には全体の50%を占めたが、この10年間で42%に低下。代わってアジア太平洋地域との貿易の比率が21%から32%に上昇し、中長期的に欧州と同じ水準に増やす考えだ。

インド側にとって、今回の首脳会談は、北部ジャム・カシミール州の自治権を剥奪してから約1カ月の節目で開かれた。インドに対し、パキスタンと中国はそろって非難の声をあげ、国際社会に働きかけた。これに対し、ロシアは「印パ2国間の問題だ」と沈静化に動いた。モディ氏は今回の会談でプーチン氏に謝意を伝えた。

インドはカシミールでのテロを警戒し、自治権剥奪にあわせてインターネットや電話などの通信環境を遮断したままだ。ロシアの側面支援を受けてもカシミール問題は解決の糸口が見えず、印パの緊張は高まっている。欧米などからは核保有国である両国の対立激化への懸念の声が出ている。

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