2019年9月18日(水)

歌舞伎の若手俳優、勉強会から広がる活躍の場

文化往来
2019/9/10 9:53
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この数年の毎夏、歌舞伎界の若手俳優による勉強会や自主公演が積極的に行われ、一服の清涼剤という以上の清風を送り込んでくる。中村又五郎の長男歌昇と次男種之助による「双蝶会」、尾上右近の「研の会」が皮切りだった。平素は演じる機会のないような大役に取り組んで、日ごろの研さんの程をうかがわせる成果を見せる。歌昇の「関の扉」の関兵衛、種之助の「吃又(どもまた)」のおとく、右近の「鏡獅子」「弁天小僧」など瞠目(どうもく)に値するものだった。

今年発足した「九団次・広松の会」は、ベテランに近い立ち役と若手女形というユニークな組み合わせが面白い(撮影:吉野耕介)

今年発足した「九団次・広松の会」は、ベテランに近い立ち役と若手女形というユニークな組み合わせが面白い(撮影:吉野耕介)

また中村富十郎の遺児鷹之資の「翔之会」は国立能楽堂で仕舞や舞獅子などを能楽界の大家の指導の下、古典劇の演者として遠い将来を見据えた稽古の成果を見せてきた。こうした破格の勉強ができるのも亡き父の遺徳によるところ大だろうが、第6回の今回は初代富十郎三百年祭として国立劇場で妹の渡邊愛子が「京鹿子娘道成寺」を、鷹之資が「英執着獅子」を踊るまでに成長した。

これらの動きに刺激されたか、今年は新たに中村梅玉門下の梅蔵、梅乃、梅丸、梅秋、梅寿の5人による「高砂会」と、市川九団次と大谷広松の2人の会が発足。「高砂会」は師の梅玉に似て端正な中にも意欲をみなぎらせた好感度十分の舞台ぶり、ベテランの域に入りつつある九団次と若手女形の広松という2人の会も、異色の組み合わせが単なる勉強会とひと味違うユニークさが興味深いものだった。

ひと口に若手花形といっても、それぞれに立つ位置も違えば、歩む道・目指すところも異なる。「双蝶会」が今年休会だったのは、歌昇・種之助それぞれに活躍の場が広がったこともあるだろうし、「翔之会」が今回で仕納めとなるのは花形として舞台に立つ時が至ったからでもあるだろう。莟(つぼみ)は開き始めている。

(演劇評論家 上村以和於)

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