3日で100万個売れたローソンのデザートの顔「バスチー」を生んだ37歳
U40の匠

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コラム(ビジネス)
2019/9/10 6:00
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ローソンのオリジナルスイーツ「バスチー」が空前のヒットを続けている。発売3日で売り上げ100万個を突破し、社内のデザート部門の売上高では18週連続1位を獲得するなど、同社の歴史を次々と塗り替えている。バスチーを開発した商品本部の東條仁美・シニアマーチャンダイザーが、誕生の経緯を語った。

「U40の匠」とは 各界で活躍する40歳未満(Under40)の若手社会人を「匠」(たくみ)と位置づけ、彼らが残してきた足跡に迫る連載企画です。

バスチーは2019年3月の発売以来、30~40代の女性を中心に人気が爆発。名実ともにスイーツコーナーを引っ張る存在になっている。200円を超す価格ながら、その勢いは2009年発売のローソンスイーツの代名詞「プレミアムロールケーキ」を超えた。

いまのローソンのスイーツ部門の売り上げはプレミアムロールケーキがヒットした時代以上の勢い(ローソン提供)

いまのローソンのスイーツ部門の売り上げはプレミアムロールケーキがヒットした時代以上の勢い(ローソン提供)

東條がバスチーの開発に参加したのは2018年。当時社内では「ローソンのデザートの顔」が待ち望まれていた。プレミアムロールケーキが出てから10年。その間もゴディバとのコラボスイーツなどヒット商品は数多かったが、「ネクストプレミアムロールケーキ」といえるまでには届いていなかった。

消費者がローソンのスイーツに抱くイメージはなにか。東條が調査したところ「安心感」という言葉が浮かび上がった。プレミアムロールケーキに代表される、手軽だけど本格的なスイーツ。これに消費者は安心していた。ただそれが東條の目には弱点に映った。「人に伝えたくなるワクワク感が消えてきた」

人がワクワクするのは、おいしさや楽しさを誰かと共有したいときだ。そう考えた東條が、ワクワクできるローソンをつくるために注目したのがスイーツの「売れ筋」。愛好者の間口の広いスイーツのほうが潜在的にヒットしやすいとみて、日本人の定番スイーツのひとつ、チーズケーキを選んだ。

そのころ日本のチーズケーキ界には新しい風が吹きつつあった。表面を真っ黒に焦がした「バスク風チーズケーキ」がスペインバスク地方から上陸。「レアでもなく、ベイクドでもない。新感覚だ」。スイーツとスイーツを組み合わせる「ハイブリッド」のトレンドも取り入れ、新しさを演出した。

こだわったのは食感や味だけではない。見た目も魅力的にすることがヒットには欠かせない。マーケティング部門と協力し、パッケージにもインパクトを盛り込んだ。ローソンのスイーツでは珍しい原色の黄色を採用。加えて「バスチー」というつい口にしたくなるキャッチーな名前もつけてもらった。

こうして自信作を作り上げた東條には、もうひとつ越えるべきハードルがあった。社内競合だ。ローソンはオリジナルスイーツだけで年200品出る。そのなかのイチオシにならないと生産が増えず、消費者は存在に気づかない。

「本当にバスチーでいいのか」。これを証明するにはテスト販売で結果を出す必要があった。一部地域で先行的に販売し、高い需要がわかれば、広告費も重点的に投じてもらえ、知ってもらえるチャンスが増える。

こうして迎えた2019年2月。全国3県で試験販売したところ売り切れになる店舗も出るほどの大ヒットに。「これはいける」。異例の2回目のテスト販売も経て、バスチーが世に受け入れられているとの強い根拠を得た。同時にスイーツでは珍しい、製造2社体制の布陣も決まる。こうして、バスチーが多くの人の手に届く下地ができあがった。

東條のマイルールがこの3つだ。心がけているのは徹底的に調べること、そしてチーム員とのコミュニケーションだ。「いろんな人からありがとうと言ってもらえることが一番うれしい」。スイーツに関わるすべての人の笑顔のために、きょうも東條はヒット食品のタネを生み出し続けている。

【U40の匠 連載一覧】
(1) 音楽の楽しみ方を変えた男 大庭寛(ソニー)
(2) 観る前から面白いと言われる番組仕掛人 谷口達彦(AbemaTV)
(3) スタジアム満員請負人 原惇子(横浜DeNAベイスターズ)
(4) 日本人のエンタメ偏差値を上げた男 小林将(うんこミュージアム)
(5) コンビニスイーツの革命家 東條仁美(ローソン)
(6) キウイをスターにした女 猪股可奈子(ゼスプリ)

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