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種牡馬「2トップ」なき後の生産界の行方

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2019/9/7 5:30
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今夏の競馬界で最も大きなニュースといえば、国内の馬産を支えていた種牡馬「2トップ」の相次ぐ訃報だった。7月30日にディープインパクトが17歳で、わずか10日後の8月9日にはキングカメハメハが18歳でこの世を去った。

同じ金子真人氏(現在の馬主名義は金子真人ホールディングス)の服色で2004、05年の日本ダービーを制覇。故障のため2年先に種牡馬入りしたキングカメハメハは10、11年に中央競馬の種牡馬ランキング首位を占め、12年からはディープインパクトが"先輩"を押しのけて首位の座を奪い、昨年まで守り続けている。

どちらも種牡馬としては間違いなく大成功したといえるが、今後を考えると両馬の立場に微妙な差が見える。また、両馬が開いた「大量交配の時代」が、今後の生産界にいかなる影響を残すか。存在が大きかった分、投じられたテーマも重くなってくる。

8月9日に死んだキングカメハメハ

8月9日に死んだキングカメハメハ

キングカメハメハは04年にNHKマイルカップ、日本ダービーとG1を連勝。秋もG2の神戸新聞杯を勝ってその後の活躍が期待されたときに、右前脚の屈けん炎を発症、そのまま引退した。種牡馬としての供用開始は05年で、4歳まで競走生活を全うしたディープインパクトより2年先んじた。

有力馬が出始めたのは2世代目(06年交配)からで、アパパネが10年の3歳牝馬三冠を制覇し、牝馬限定G1を計5勝。同年齢のルーラーシップは5歳時に香港・シャティンのクイーンエリザベス2世カップで待望のG1制覇を果たした。さらに、3世代目からはロードカナロアが出現。国内外でG1を6勝し、特に日本馬にとって鬼門とされた香港スプリントを12、13年と連覇したことで評価を高めた。

ルーラーシップは母が1997年の年度代表馬エアグルーヴで、国内生産界を支配するサンデーサイレンス(SS)の血を持たず、SS系牝馬と交配がしやすい利点もあったため、期待を集めていた。初期の産駒から早々に後継候補が出た形だ。

キングカメハメハ産駒、種牡馬で活躍

種牡馬入り後はルーラーシップ、ロードカナロアの両馬とも期待にたがわぬ活躍ぶりだ。ロードカナロアは初年度、いきなりアーモンドアイという超のつく大物を出した。昨年の3歳牝馬三冠とジャパンカップを制覇。ジャパンカップでは従来の記録を1秒5も短縮する破格のコースレコードでファン、関係者の度肝を抜いた。

今年は海外デビューとなった3月末のドバイ・ターフで5つ目のG1タイトルを確保。続く安田記念は不利もあって3着と惜敗したが、既に「日本の歴代最強牝馬」という呼び声がかかる。

牡馬も初年度産駒からステルヴィオが昨秋のマイルチャンピオンシップを優勝。2世代目のサートゥルナーリアが2歳時のホープフルステークス、今春の皐月賞と芝2000メートルのG1を連勝。日本ダービーは出遅れて4着と敗れたものの、異父兄にエピファネイア、リオンディーズ(ともに現種牡馬)というG1馬がいて、既に種牡馬入りのチケットを確保したといえる。

ルーラーシップは初年度産駒からいきなり17年の菊花賞馬キセキが登場。同馬は昨年上半期に調子を落としたものの、下半期に復調。菊花賞以降、勝ち星はないが、G1で2着3回を数え、特に18年ジャパンカップでは果敢に逃げて破格の記録を演出した。今秋は凱旋門賞に挑む予定で、8月21日に既にフランス入り。実績と5歳という年齢を考えると、来年の種牡馬入りもあり得る状況で、その場合、キングカメハメハの孫世代初の種牡馬となる。

このほか、15年の皐月賞、日本ダービーを制したドゥラメンテは来年に産駒がデビュー。17年日本ダービー、18年天皇賞・秋を制したレイデオロも来年には種牡馬入りの可能性がある。もともとキングカメハメハは万能タイプで、ディープインパクト産駒が得意ではないダートや短距離に強い。

短距離で活躍したロードカナロアは、産駒にもスピード型が多い一方で、2000メートルまではこなす馬も出ている。また、ダート路線で活躍したホッコータルマエ、ベルシャザールも種牡馬入りしている。唯一の弱点は3000メートル級の長距離だが、ステイヤー離れが進む生産界の現状では、さほど大きな問題とはいえず、国内で今後、父系として枝葉を広げそうだ。

種牡馬ランク高くないディープ産駒

昨年、国内で供用されたディープインパクト産駒の種牡馬は20頭を数え、キングカメハメハの15頭を上回る。今年はさらに5頭が種牡馬入りし、英国で供用されていたダノンバラードも帰国した。種牡馬入りが2年遅かった点を考慮すれば、いかに多いかがわかる。だが今年の中央の種牡馬ランキングをみると、最高はディープブリランテの22位。キングカメハメハ系から3位ロードカナロア、5位ルーラーシップが出ているのとは対照的だ。

つい昨年まで父が健在だった影響もありそうだ。キングカメハメハは13年以降、免疫機能の低下に苦しみ、交配頭数を制限していた分、後継馬への移行が早まった面がある。一方、ディープインパクトの後継候補は、ディープ自身と競争する形になるから分が悪い。しかも、牝馬の活躍が目立つ。産駒は中央平地G1を49勝(他にJpn1を1勝)しているが、うち26勝は牝馬。現状、代表産駒としては国内外のG1を7勝した牝馬ジェンティルドンナの名前が挙がる。

中央G1を2勝した牡馬はサトノダイヤモンド、ミッキーアイル、現役のアルアイン、フィエールマンと、さすがに増えてはきた。だが、期待の大きかったサトノダイヤモンドが4歳時以降、G1を勝てなかった辺りから、成長力に疑問を感じさせている。

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