2019年9月21日(土)

なごやめし、世界へ あえて味「そのまま」で勝負
ナゴヤの名企業 新戦国時代 第3部 外食(1)

小売り・外食
中部
2019/9/9 6:30
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手羽先、味噌煮込みうどん、モーニング――。濃厚な味や価格のお手ごろ感で愛されてきた「なごやめし」が世界に広がっている。中部に本拠を構える外食各社がアジアで出店を増やし、最近ではブランドを磨こうと欧州やインドなど新しい地域への進出も狙う。訪日客の増加で本場の味を知る外国人も増え、あえて名古屋の味をそのままに勝負しようと中部企業が動き始めた。

■「山ちゃん」、食感工夫で現地溶け込み

「手羽先を5本ください」

今年1月、マレーシアのクアラルンプール郊外の商業施設内に居酒屋「世界の山ちゃん」がオープンした。同国では2店目で、1日約180人と国内店平均の1.5倍にあたる来店者が舌鼓をうつ。

店舗運営のエスワイフード(名古屋市)で海外店を担当する木元建一郎顧問は「7割が現地の方。観光客相手でなく、普段使いの飲食店として認識されている」と話す。

鶏の仕入れや加工を工夫したといい、食感も味も日本で食べるものと変わらない。カレーうどんやひつまぶし、味噌煮込みうどんなどのなごやめしも提供する。

なごやめしは赤味噌などを使った濃厚な味が特徴だ。「マレーシアなど東南アジアではスパイスを使った料理が多く、なごやめしが受け入れられやすい」(木元顧問)という。イスラム教の国だけにアルコールを口にしない来店者は多いが、「本物」の味が支持され好調を維持している。

壱番屋はロンドンにカレー専門店を開いた(18年12月)

壱番屋はロンドンにカレー専門店を開いた(18年12月)

愛知県だけでなく東京都や大阪府などでも味噌カツを提供する矢場とん(名古屋市)も海外で活躍の場を広げる。2014年にはタイに、16年には台湾に出店した。

■サガミ、満足感を武器に

品質の良い商品を手ごろな価格で届ける「満足感」は中部の外食各社がこだわってきたポイントだ。タイのバンコクにある和食店「サガミ」で出されるそばは370バーツ(約1300円)と決して安くはない。しかし、日本の職人が打ったそばが食べ放題の場合もあり、満足感が消費者の心をつかみ好調だ。

名古屋の食文化として忘れてはいけないのが「モーニング」と呼ばれる朝食文化だ。「コメダ珈琲店」は18年に台湾に進出した。飲料のみの価格でパンも提供される「お値打ち感」を武器に出店を増やす。台湾では朝食を外で済ます人が多い。豆乳やミルクティーなど喫茶文化も発達している。コメダのモーニングが広がる素地があると判断した。

日本国内の外食産業を取り巻く環境は厳しさを増している。原材料費は高止まりし、10月には消費増税による集客減が予想される。パートが確保できないといった人手不足も深刻だ。少子高齢化で国内需要は大幅には伸びないと見られており、海外事業の拡大は外食企業各社の喫緊の課題といえる。

吉野家HDなどこれまでの日本企業の多くは現地に合わせて商品を開発し、事業の拡大を図ってきた。吉野家は中国で豚の角煮を使った丼などを開発し「現地化」することで成長してきた。丸亀製麺を運営するトリドールHDは中国での成長を確保するため、香港の米粉麺会社を買収し現地のニーズに合わせた。

一方、中部の外食企業は「そのまま」を重視する。現在、愛知県では官民を挙げてなごやめしの魅力を周知している。15年にはサガミHDや壱番屋などがミラノ国際博覧会に出店し好評を得た。訪日外国人が増加したことで「本物」の味を知る消費者も増え、なごやめしへの需要は高いと見た。

まだまだ店舗数は少ない。吉野家HDの海外店舗は2月時点で923店に及ぶが、「山ちゃん」のエスワイフードは9店、コメダHDは7店にすぎない。一過性のブームに終わらず現地に根を下ろすことができるか。なごやめしの地力が試される。

■観光けん引する「なごやめし」
 「なごやめし」という言葉ができたのは比較的最近だ。2001年にゼットンが東京に進出した際、名古屋の郷土料理を指す言葉として当時の社長稲本健一さんが提案したものだ。名古屋市だけでなく、三重県など中部地方で食べられる料理全般を指す。
 味噌カツなど赤味噌を使った料理が多いが、エビフライや手羽先など使わないものもある。ういろうやえびせんべいといった菓子類も含まれる。モーニングは厳密にはサービス名だがなごやめしとして認識されている。
18年に名古屋市が全国8都市で行った調査では名古屋を訪れてやりたいこととして25%の人が「なごやめしを食べる」と答えた。官民の周知活動によって観光資源に育ちつつある。

(植田寛之)

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