米製造業が3年ぶり「不況」 大幅利下げ観測浮上

貿易摩擦
2019/9/4 10:45
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米ケンタッキー州のフォード工場=ロイター

米ケンタッキー州のフォード工場=ロイター

【ワシントン=河浪武史、ニューヨーク=中山修志】米製造業の景気不安が強まっている。中国などとの貿易戦争が長引き、8月の景況感指数は3年ぶりに「不況」に転落した。トランプ米政権の関税政策で保護されてきた鉄鋼業なども業績が落ち込み始め、雇用などへの悪影響が懸念される。米連邦準備理事会(FRB)が9月中旬の会合で大幅な利下げに踏み切るとの観測も浮上する。

米サプライマネジメント協会(ISM)が3日発表した8月の米製造業景況感指数は、前月から2.1ポイント低下して49.1となった。指数が好不況の境目である50を下回ったのは、「チャイナショック」によって金融不安が強まっていた2016年8月以来3年ぶりだ。同指数は米中が制裁関税を掛け合って貿易戦争に突入した18年夏をピーク(同年8月=60.8)に下がり続け、トランプ政権発足後で初の「不況」ライン割れとなった。

貿易戦争は個別企業の業績を強く下押しする。農機大手ディアは5~7月の売上高が前年同期比6%減少し、通期の業績見通しも下方修正した。中国の報復関税で大豆やトウモロコシなど米国産の農畜産品の対中輸出は18年に前年比53%も減少した。農機の買い換え需要も落ち込んで、製造業にしわ寄せが及び始めている。

トランプ政権は米国内の鉄鋼業を保護するために、日本製品などに追加関税を課してきたが、鉄鋼大手のUSスチールは7月から15%の減産に入った。市況が回復するまでミシガン州の鉄鋼所で従業員200人を一時解雇する。米新車販売は1~6月に前年同期比2%減となり、通年でも2年ぶりの前年割れが避けられない見通しだ。大型減税の効果も一巡し始めており、国内景気も息切れ感がにじむ。

実際、ISM製造業景況感指数の個別項目では、先行きの景気動向を敏感に映す「新規受注」が47.2と前月から3.6ポイントも低下した。米経済は4~6月期の設備投資が約3年ぶりに前期比マイナスに転落。中国やドイツの景気減速も目立っており、製造業の受注が急減速している。米景気全体を支える「雇用」も47.4と前月から4.3ポイントも下がった。

300社超の製造業に聞き取り調査するISM景況感指数は、景気転換の先行指標とされ、FRBも金融政策の判断材料の1つとして注視している。FRBは7月末に10年半ぶりの利下げに踏み切ったが、直後にトランプ大統領が中国製品への制裁関税第4弾を発表。企業心理は金融緩和後に一段と悪化した。非製造業の景況感指数も7月は53.7と16年8月以来、2年11カ月ぶりの水準まで低下している。

FRBは9月17~18日にFOMCを開くが、先物市場は100%の割合で7月末に続く利下げを織り込んでいる。3日の景況感指数の発表を受けて金融市場では利下げ幅が通常の0.25%ではなく0.5%になるとの観測が浮上し始めた。

パウエルFRB議長は8月末の国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で「世界景気に減速の兆候があり、成長持続へ適切に行動する」と述べた。9月の利下げを強く示唆するのは避けつつも、追加緩和に含みを持たせた。市場が利下げを完全に織り込む中で歯切れの悪い発言に終始したのは、FOMC内に「経済状況をみる限り、追加措置を講じる時期ではない」(カンザスシティー連銀のジョージ総裁)と利下げに反対する意見が残っているためだ。

ただ、利下げに積極的なブラード・セントルイス連銀総裁は「0.5%の利下げが選択肢として浮上し、活発に議論されるだろう」と大幅な政策金利の引き下げを主張し始めた。中央銀行は金融緩和時には市場に「サプライズ」をもたらして心理効果を高める傾向がある。7月末の利下げ幅は通常の0.25%にとどまったが、9月中旬の会合は利下げ幅が注目点となりそうだ。

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