災害時の事業継続、被災ノウハウ共有 6日で北海道地震1年

北海道地震
2019/9/3 19:05
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北海道地震は6日で発生から1年。地震の教訓を踏まえ、企業が災害発生時に事業を継続できるよう被災ノウハウを共有したり、同時被災の可能性が低い遠隔地の同業他社と連携したりする動きが広がっている。南海トラフ地震など大災害の場合は行政の支援が期待できない状況も想定され、可能な限り自ら事業を継続できる態勢づくりが急務となっている。

DCMホールディングスが中小企業向けに実施している「事業者向け災害時対応セミナー」(札幌市、5月)

DCMホールディングスが中小企業向けに実施している「事業者向け災害時対応セミナー」(札幌市、5月)

「全員が手順を共通認識として持つためにはマニュアルが必要だ」。5月に札幌市で開かれた災害時対応セミナー。北海道や東日本で約290店舗を展開するホームセンターDCMホーマック(札幌市)の三浦正行エリアマネジャーが、中小企業トップら約30人に被災時のノウハウを語った。

同社は北海道地震の当日も、震源近くで揺れと停電の影響を受けた店舗を開店した。三浦さんが管轄する店舗では開店前から懐中電灯やガスコンロを求める約400人の客が列をつくった。

三浦さんは地震に対応できた理由について「営業再開が遅れた東日本大震災の教訓を生かした」と説明した。非常用電源などハード面の整備に加え、地震や洪水などの災害別、規模別に細分化したマニュアルの作成が重要という。マニュアルは全従業員に配布し携帯を求めている。

最大震度7の北海道地震では「震度5弱以上」のマニュアルに従い、店長らが各店舗に急行。被害の有無や従業員の安否を確認し、エリアマネジャーと無料対話アプリのLINE(ライン)で情報を共有してスムーズな開店につなげた。

同社は被災者支援などに取り組む一般財団法人ダイバーシティ研究所(東京・新宿)と共同で、セミナーで被災ノウハウを防災対策に悩む中小企業に提供している。2019年度は全国6カ所で開き、札幌市のセミナーに参加した中小企業からは「実体験に基づく情報は役立つ」などの声が上がった。

ビル管理の東急ファシリティサービス(東京・世田谷)は2月、南海トラフ地震発生で太平洋側の交通が断絶したと想定し、日本海側を経由するルートで物資を届ける「物資代替輸送演習」を実施した。横浜市内の事業所から社員2人が交代でトラックを運転し、2日間かけて兵庫県内の商業施設に非常食などを届けたという。

同社は同時に被災する可能性の低い遠隔地の同業他社と「お互いさま連携協定」を結んでいる。過去2年間で7社と締結。2月の演習で協力した阪急阪神ビルマネジメント(大阪市)とは、どちらかが被災した際に片方が支援することを決めている。

東急ファシリティサービスBC研究センターの神村孝弘副センター長は「被災したときに自社だけの力で復旧に取り組むのは難しい。日ごろから顔の見える関係をつくり、いざというときに助け合える関係性を結ぶことが大切だ」と話す。中小企業庁などによると、こうした遠隔地の同業他社との連携は中小企業も参考になるとしている。

●BCP策定、中小は4割以下

 政府は3月に公表した南海トラフ地震対応の指針で、地震発生の可能性が高まったとして気象庁が臨時の情報を出した際も、企業は「事業の継続が望ましい」とした。インフラや物流が止まると社会的な影響が大きく、避難生活に支障が生じかねないためだ。

ただ、その際に不可欠な災害時の事業継続計画(BCP)の策定が中小企業では遅れている。NTTデータ経営研究所(東京・千代田)の2019年公表の調査によると、BCPを策定した中小企業(従業員数100~499人)の割合は38.3%。2年前の前回調査からほぼ横ばいだった。

従業員数99人以下の企業では4分の1が「策定の予定なし」とした。サプライチェーン(部品供給網)の復旧や代替策を決めていた企業も2割に満たなかった。調査では「自社単独のBCP策定に限界を感じる」「外部からの調達・供給がないと事業継続が難しい」などの声があった。

民間企業のBCPコンサルティングを手掛ける日本経済研究所(東京・千代田)の川島啓研究主幹は「中小企業は平時の業務さえ手いっぱいで、災害時も人手を確保できない恐れがある。できることとできないことを分別し、限られた人員で優先事業を続けることが必要だ」と指摘する。

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