進むドル高、利下げでも2年半ぶり水準 消去法の資金流入

2019/9/3 16:39
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【ニューヨーク=後藤達也】米国が7月末に利下げに踏み切ったにもかかわらず、ドル高が続いている。ドルの総合的価値を示す名目実効レートは約2年半ぶりの高値だ。足元では米景気は欧州やアジアに比べて底堅く、消去法でマネーが流入している。ただ、トランプ米大統領は輸出への依存度が高い製造業への逆風になると警戒しており、先行きの不透明感は強い。さらにドル高が進めば為替介入に動くとの思惑も浮上してきた。

ドルの主要6通貨に対する価値を示す米インターコンチネンタル取引所算出の指数は、2日に99.13と2年4カ月ぶりの高水準を付けた。国際決済銀行(BIS)による対新興国通貨を含めたドルの名目実効レートも8月分は124.74となり、2017年1月以来の高値だった。あと1%強上がれば16年の高値を超え、02年以来のドル高になる。

通貨別に年明けからのドルの騰落率をみると、人民元に対し4%強上昇した。8月に中国が通貨安を容認して以降、ドル高が加速した。欧州連合(EU)離脱問題に揺れる英ポンドに対しても5%以上上昇し、対ユーロでは4%高だ。主要通貨でドル安なのは対円だけとなっている。円は「安全通貨」とされるほか、日銀の追加緩和余地が乏しいとみなされ3%の円高・ドル安だった。

「米景気の底堅さがドル高につながっている」と米ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの為替戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は指摘する。米景気の減速懸念は強まっているが、足元では雇用や賃金が伸びて消費は底堅い。一方、英国やドイツは4~6月期にマイナス成長となり、アジアも貿易の減少が目立つ。

金利の面でも米国は優位を保つ。米10年債利回りは8月に2.0%程度から1.5%程度へ急低下したが、欧州や日本ではマイナス金利の国債が急増している。1%以上の金利がついている国債は希少となり、資金が集まっている。

米財務省によると、海外の米国債保有は1~6月に3802億ドル(約40兆円)増えた。半期では09年1~6月以来、10年ぶりの伸びだ。増加額は日本が831億ドルと首位で英国(530億ドル)、インド(214億ドル)などほとんどの国で増えた。日本の統計では7月以降も外国債投資が増え、多くは米国債に流れているとみられる。

こうした動きを背景に進むドル高に、トランプ氏はいら立ちを募らせる。米連邦準備理事会(FRB)に利下げを再三迫り、8月27日には「FRBは私たちの製造業が輸出で苦しむのを見るのが好きなのだ」とツイッターで攻撃した。人民元安を容認する中国を8月に為替操作国に認定し、欧州中央銀行(ECB)にも「ユーロは不当に安値だ」などと海外にも露骨なけん制をしている。

ただドルへの資金還流は、トランプ氏が仕掛けた貿易戦争で世界景気の先行きに不透明感が強まったのが一因だ。FRBのパウエル議長は7月末の記者会見で「政策金利が高すぎるから企業が投資をしていないということは聞いていない」と述べ、世界的な需要の弱さを指摘した。

市場ではドル売り介入の思惑もくすぶっている。ムニューシン財務長官は8月28日、米通信社のインタビューに「将来、状況が変わる可能性があるが、現在は介入を考えていない」と述べた。7月にはナバロ大統領補佐官が為替介入を提案し、トランプ氏が却下したとの報道もあった。

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