2019年9月16日(月)

「文・理の区分なくし教養教育の徹底を」岡本毅氏
混迷・入試改革 キーパーソンに聞く

大学
2019/9/3 19:47
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グローバル化や人工知能(AI)の発達など社会と経済が激変する中で、経済界は入試や高校・大学の教育に何を期待するのだろうか。経団連の教育・大学改革推進委員長を務める岡本毅・東京ガス相談役に聞いた。

――大学入学共通テストが2021年1月に迫っています。入試改革の現状をどう見ていますか。

岡本毅・東京ガス相談役

岡本毅・東京ガス相談役

「具体的なことはそれほど知らないが、この段階にしてははっきりしないことが多いため、不安を持つ人が多いという印象は持っている」

――今回の改革の理念は、経団連の大学改革の提言と一致点が多いように思います。

「産業界が学生に期待するのは自ら課題を発見して掘り下げ、自分の頭で論理的に考える力と、それを発信し、反応を受け止めてさらに発信し直すようなコミュニケーション能力だ。高大接続改革の目指す理念は非常に結構で、経団連で議論してきたことと、ほとんど一致している。問題は理想像に向かって現実的な解をどのように求めるかだろう」

――共通テストに導入される記述式問題は本格的な記述問題とは言い難い面があります。表現力などは本来、各大学が個別試験で測るべきでは。

「共通テストをどう位置づけるかだろう。かなりの大学は個別試験で記述問題のウエートを高め、苦労して作問や採点をしており、大学に任せてもいい。一方で独自に作問、採点する力がない大学は共通テストを有効利用する。そう割り切って考えてもよいのではないか」

――グローバル化や技術革新が急速に進んでいます。

「経済界・産業界が求める人材像は本質的には昔から変わっていない。確かに大学で情報系の素養や外国語力を身につけてほしいという期待値は上がっている。だが、経済界・産業界の期待はそういうものではなく、もっと広い」

「AIが発達するほど、使う人間が価値判断をしっかりできないと厄介な問題が起きる。端的な例は武器の使用をAIが自律判断する兵器の登場に伴う問題だ。これに対応する力はAI能力、情報能力ではない。もっと幅広い、基礎的なものを考える能力や知識、いわゆるリベラルアーツ(教養)だ」

――大学教育には特に何を期待しますか。

「英語力だけでは不十分。併せて人文社会系の学問をしっかり身に付け、自分のものにしていくことが不可欠だ。そのためには文系・理系の区分を一度やめてはどうか。高校時代は文理区分をなくし、入試もできれば共通科目にして、文理双方の勉強をさせる。入学後、1~2年次はリベラルアーツを徹底して学び、3年次ぐらいから理系・文系に分かれて専門教育をしてもよいかもしれない」

「思考能力を高めるには、おそらく専門分野の掘り下げた学問が必須になる。専門分野の勉強をすればするほど学問の裾野は広がる。それが本当のリベラルアーツだと理解している。経団連と大学でつくる産学協議会が4月に出した中間とりまとめにも、リベラルアーツの重要性が盛り込まれている」

――経団連の大学改革の提言は、学力を問われずに入学できることによる大学教育の質の低下も問題視しています。

「入試の議論からは外れるが、18歳人口が減る中で、約800校という大学の数を維持していくのは無理がある。統廃合は避けられない。大学生の大半を占める中堅以下の大学に進む高校生の学力を担保するには、小中学校の段階で読解力や国語力を定着させることが大事だと思う」

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