世界柔道、個人の金「4」 海外勢との差縮まる
1日に終了した柔道の世界選手権で日本が個人戦で獲得した金メダルは4個(男子2、女子2)だった。昨年の金7(男子2、女子5)からすればさみしい結果だが、数字だけに一喜一憂しては本質を見誤る。内容も加味すれば、追う側、追われる側ともに世界との差が縮まった印象だ。

女子は海外勢の底上げに苦しんだ。世界女王の座を明け渡した女子57キロ級の芳田司(コマツ)は、カナダの出口クリスタ(日本生命)との決勝もさることながら、ポーランド選手との準々決勝も危なかった。
通常と逆向きに担ぎ上げる通称「韓国背負い」の使い手は世界ランク26位の無名。女子ではめったに見られぬこの技で一度は技ありを奪われた。団体戦で一本負けしたフランス選手は典型的なパワー型。世界19位ながら個人戦では出口から唯一ポイントを奪い、大物食いの雰囲気も。未知の新鋭が現れ、勢力図を塗り替えつつある。
伏兵に敗れ3連覇を逃した女子70キロ級の新井千鶴(三井住友海上)だが、その相手は決勝進出。年明けには「何年も強い選手が変わらない。へましないことだけ考えればいい」と余裕の発言もしていた男子60キロ級の高藤直寿(パーク24)も準々決勝で土がついた。五輪モードで海外勢も目の色が変わり、昨年までのようにはいかない。
一方、追う側には光明も見えた。過去3戦すべて完敗したビロディド(ウクライナ)を追い詰めた女子48キロ級の渡名喜風南(パーク24)。アグベニェヌ(フランス)と死闘を演じた63キロ級の田代未来(コマツ)の戦いにも増地克之女子監督は「次は勝つ」と力強い。
男子100キロ超級の原沢久喜(百五銀行)も強敵を連破し、準決勝は昨年王者を破っての銀。昨年銅から一歩前進でも価値はそれ以上だ。男子81キロ級以上の4階級は銀2、銅1。17年大会は個人戦の代表派遣も見送られた90キロ級で向翔一郎(ALSOK)が銀と躍進した。どの階級も毎年上位が入れ替わる混戦に食らいつき、一時の不振を脱した観はある。
リオデジャネイロ五輪前年の世界選手権覇者のうち、翌年も頂点に立ったのは大野将平(旭化成)ら4人だけ。今大会も大野ほどの力の違いを見せつけた階級も見当たらなければ、五輪優勝は絶望といった階級もない。強化次第で金が10個以上にも、極端に言えばゼロにも振れかねない。そう肝に銘じて最後の1年、ラストスパートをかけたい。(西堀卓司)