埼玉県、県立病院独法化へ ニーズ対応・人材確保狙い
News 潜望展望

2019/9/2 18:42
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埼玉県は県立病院の運営主体を、2021年度に地方独立行政法人へ移行する検討に入った。公立病院は救急や小児医療など多くの医療機関で不採算になりがちな診療科を担う役割があるが、慢性的な赤字体質は自治体財政を圧迫する。運営形態の見直しで経営の自由度を高め、設備管理の効率や医師の処遇を向上し、経営改善を目指す。

小児医療センターではNICUなど新生児の集中治療に必要な設備をそろえる(さいたま市)

県内には循環器・呼吸器病センター(熊谷市)、がんセンター(伊奈町)、小児医療センター(さいたま市)、精神医療センター(伊奈町)の4つの県立病院がある。全体の決算は高額医薬品など材料費の増加もあり医業費用が医業収益を上回る状況だ。一般会計から繰り入れしても18年度は18億円の純損失だった。

独法化の目的の一つが人手確保だ。現行の地方公営企業法では給与体系や雇用条件などを柔軟に決められず、管理職の時間外手当などもない。職員数を増やそうにも定数条例の改正が必要となる。独法なら民間同様に兼業を認めたり、手当を設けたりできる。県は独法化で職員の給与や勤務体系を改善し人材確保と定着につなげたい考えだ。

人手不足が病院運営にもたらす影響は大きい。特に循環器・呼吸器病センターは医師の欠員が著しい。同病院の医師数は定員より17人少ない57人(8月1日現在)。病床利用率も69.4%で4病院の中で最も低い。県によると、医師は4病院で30人の欠員だ。設備があっても医師が少ないと受け入れられる患者の数は限られる。現場からは「どの職種も人数が足りず、チーム医療が組めない」と医療の質への影響を懸念する声もあがる。

人材以外にも、医療機器の購入や保守点検を長期契約すれば経費削減になるなどの利点がある。ただ、独法化だけで経営を改善できるわけではない。16年に独法化した栃木県立がんセンターでは入院患者の減少などが影響し、17年度は1億円余の赤字となった。人口10万人あたりの医師数が全国最少の埼玉県では、医師確保自体も容易ではない。

総務省によると、公立病院の経常損益は831億円の赤字。経常収支が赤字の病院(地方独立行政法人を含む)は全体の61.7%(16年度)で、比率は増加傾向だ。

県は4病院の職員らのワーキンググループのほか、異業種が参加する会議などで独法化に向けた現場や県民のニーズを調査中だ。効率経営とともに、高度な医療体制や人員充足で患者に選ばれる病院になる必要がある。

県も改善に乗り出している。16年12月に新病院に移転した小児医療センターで重度疾患の新生児治療を強化、それまで県内から東京都へ妊婦を年50件搬送していたのが18年度は6件になった。19年4月には移植センターを開設し小児生体肝移植を県内初で実施した。

「県民の医療ニーズに対応し、民間ではできない最先端の医療を提供し続けたい」(病院局)とする。これらの取り組みは、同様の課題を抱える各地の公立病院改革の行方を占う。(藤田このり)

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