市場 不安定さ増す 米、対中関税「第4弾」発動

2019/9/1 16:30
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株式市場はトランプ氏発言で不安定に(ニューヨーク証券取引所)=ロイター

株式市場はトランプ氏発言で不安定に(ニューヨーク証券取引所)=ロイター

【ニューヨーク=宮本岳則】米国の対中関税「第4弾」発動を受けた今週の世界の株式市場では、不安定な値動きが続きそうだ。トランプ米大統領が8月に入って関税による圧力を一段と強め、米中が近く何らかの合意に達する、との期待は急速にしぼんだ。経済や企業業績の見通し悪化につながり、長期投資家はリスクをとりづらくなっている。世界的な金融緩和の動きでも不透明感は払拭できそうにない。

8月の世界株市場は価格が上下に振れやすい不安定な展開となった。9月1日の関税発動を織り込みつつ「米中協議再開を巡るニュースの見出しに市場が振り回された」(米プルデンシャル・ファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏)。株価指数は頭打ちとなり、MSCI全世界株指数の8月の月間下落率は2%を超えた。騰落率がマイナスになったのは5月以来だ。

9月に入り「第4弾」が発動されても、市場参加者の関心は当面、米中協議の行方に集まりそうだ。米中の政府関係者は協議再開に向けて調整中としているが、具体的な日程はまだ見えていない。しばらくは狭いレンジの中で株価が不安定に動く「ボックス相場」が続くとみられる。

相場の不安定さが増したのは、長期投資家がリスク回避姿勢に傾いていることが大きい。米金融大手ステート・ストリートが8月28日に公表した「投資家信頼感指数」をみると、8月は前月比8.7ポイント減の75.9に急低下した。同指数は機関投資家の売買動向から算出し、100を下回ると投資家が「弱気」に傾いていることを示す。足元は統計を遡れる2012年1月以降で、最低水準に近い。年金など長期投資家が様子見に転じ、買いの手が止まる一方、短期筋の売買で相場が動きやすくなった。

長期投資家が懸念するのは、米中摩擦の長期化で企業の投資意欲が低下したり、外需依存度の高い国・地域の景気減速が、米国を含む世界に波及したりすることだ。トランプ米政権は8月1日、3千億ドル分の中国製品に対する制裁関税「第4弾」を9月1日に発動すると公表。8月23日には発動済みの2500億ドル分の中国製品にかける追加関税を25%から30%に引き上げる方針を示した。中国側もすぐに報復措置を打ち出すなど譲歩する気配は乏しく、投資家の懸念が一気に高まった。

「キャッシュ(現金)への資金配分は従来よりも厚めだ」。米運用会社ティー・ロウ・プライスで「マルチアセット(複数資産)」運用の責任者を務めるセバスチャン・ペイジ氏は8月中旬、こう話していた。米中摩擦については「近いうちに問題が解決すると考えていない」という。多くの投資家は不透明感が晴れない限り、株式の上昇余地が少ないとみており、保有株を現金化したり、債券に資金を移したりしている。

投資家の懸念はすでに現実のものとなってきた。欧州では英国に続き、ドイツも19年4~6月期の経済成長率が前期比でマイナスになった。悪化の主な要因は、米中貿易摩擦のあおりを受けた製造業の生産と輸出の不振だ。米金融大手ゴールドマン・サックスは26日、米国の19年下期と20年上期の経済成長率は関税によって年率0.5%押し下げられると予想した。19年上期の同0.2%から拡大すると見込む。

米企業業績の減速も鮮明だ。8月までに開かれた決算説明会の場でも、経営者から米中摩擦や景気減速を懸念する発言が相次いだ。こうした声を受けて、アナリストの業績見通しも悪化。調査会社リフィニティブが市場予想を基に算出した米主要500社の7~9月期の予想純利益は前年同期比4%減となり、7月上旬時点に比べて、減益幅が拡大した。4~6月期実績は総じて市場予想を上回ったが、見通しの悪化で、投資家は強気になれない。

7月下旬以降、米連邦準備理事会(FRB)をはじめ、世界の中央銀行が金融緩和にカジを切ったにもかかわらず、8月の投資家心理は大幅に悪化した。利下げによる世界景気浮揚効果は限定的とみられており「投資家の懸念を払拭できない」(米運用会社ヌビーン・アセット・マネジメントのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ボブ・ドール氏)ためだ。

長期投資家が株式の本格的な買い増しに動くには、米国が10月に予定する対中報復関税の税率引き上げを中止するなど、米中摩擦の緩和を示す具体的な内容が見える必要がありそうだ。金融緩和と緩やかな景気拡大に支えられた「適温相場」は貿易戦争の激化とともに終わりを迎えつつある。

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