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「お辞儀スイング」で苦手バンカー克服(上)

 「バンカーが苦手な人はプロのバンカーショットをまねてはダメ」と久富章嗣さんは言う。それはどういうことなのか。そこで久富さんと生徒さんの親睦コンペ&レッスン会に参加してバンカーショットのレッスンを受けてみた。(日本経済新聞出版社「書斎のゴルフ VOL.43」から)
バンカーはティーアップしたティーを打つ「ポトンショット」とフィニッシュでお辞儀をする「お辞儀スイング」で脱出できる

年に1回行われる久富さんと生徒さんの親睦コンペ&レッスン会があるので参加しないかと、「書斎のゴルフ」編集長に誘われた。今回のレッスンテーマはバンカーショットだという。最近バンカーショットが苦手になり、先日も大たたきしたばかりなのでラッキーと思い参加させていただくことにした。

久富さんは「逆説のゴルフ」と称して既成観念にとらわれない独自理論を展開、悩めるアマチュアの救世主的存在だ。プロを模範とする格好の良いスイングを目指すのではなく、徹底的にスコアメークにこだわった実践的なレッスンを行っている。

特に還暦を過ぎて体力が落ち始めたシニアからは、久富さんに習い始めて「Aクラスに返り咲いた」とか「80台をコンスタントに出せるようになった」など多くの声が寄せられている。今回のコンペに参加している方々もそんな久富さんに師事しているゴルファーだ。誰でも久富さんに習えば参加できる、とても有意義で楽しいコンペだ。

今回の会場は東京都北区にある赤羽ゴルフ倶楽部、埼京線の浮間舟渡駅から徒歩10分の距離にあって、電車で集合するのにすごく便利なゴルフ場だ。ラウンド後に駅前の居酒屋で懇親会を行うとのことで皆さん電車で集合。

早めに到着し着替えを済ませてロビーに出ると、すでに久富さんが何人かの方々と談笑をしている。「おはようございます」とお声をかけると、あいさつもそこそこに周りの生徒さんを集めだし、お話によるレッスンが始まった。

バンカーはスクエアスタンス、スクエアフェースで打とう!

久富 皆さん、今日は面白いクラブを作ってきました。通常、サンドウエッジ(SW)は長さが35インチと相場が決まっていますが、このSWは36.5インチあります。36.5インチというと8番アイアンの長さです。これを今日のコンペの優勝者に進呈しましょう。

集まった生徒さんは久富さんの話が理解できているようで、皆さんニコニコと久富さんの言うことを聞いている。しかし、8番アイアンと同じ長さのSWは聞いたことがなく、それを作った理由もわからない。そこで、恐る恐る質問してみた。

──すみません。いままで8番アイアンと同じ長さのSWは聞いたことがないのですが、それはどこのメーカーのモノですか。

久富 いや、これは売ってはいません。私が自分の工房で8番アイアンのシャフトにSWのヘッドを挿したものです。こうやっていろいろなものを試行錯誤しながら作るのも私のゴルフの楽しみなんです。ゴルフというものは「こうでなければならない」ということは一つもありません。もちろん、ルールの範囲内でという条件は付きますが、SWは35インチと決まっているわけではないのです。

──しかしながら、各メーカーから発売されているSWがみんな35インチだということは、それが一番良いということではないのですか?

久富 メーカーの開発者は誰に使ってもらいたいと思ってクラブを開発しているのかわかりますか。そうです、答えはトーナメントプロです。では、なぜトーナメントプロなのかというと、アマチュアが欲しがるクラブはトーナメントプロが使っているクラブだからです。決して自分の力量にあったクラブではありません。それでも、ドライバーやアイアンならプロ仕様とアマチュア仕様はシリーズ分けが明確で一般アマチュアがマッスルバックを手に取ることはなくなりました。

では、SWはどうでしょうか。最近はキャスコなどから「やさしい」を前面に打ち出したSWが発売されるようになってきましたが、つい最近のことです。私は何十年も前に同じような幅広ソールの「デル」という名前を付けたSWを自分で作って販売したことがあります。しかし、残念なことにほとんどのアマチュアはプロと同じモデルを使用したがるわけです。一般アマチュアは自分の力量よりオーバースペックのものを持ちたがる傾向がありますからね。

──確かに、ゴルフショップに行くと、やさしさをうたったSWが増えてきたように思いますが、手に取るだけで購入には至りませんね。

久富 そうでしょう。バンカーショットが苦手だと言っておきながらやさしいクラブには抵抗感がある。つまり見えがあるということです。でも考えてみてください。プロと同じSWということはプロと同じようにスタンスをオープンにしてフェースを目いっぱい開いて構えなければいけないのです。

プロはバンカーショットなんて簡単だと言いますが、それはオープンスタンスでフェースを目いっぱい開くショットを所属コースのバンカーで毎日猛練習したから言えるのです。しかもプロと還暦を超えた我々シニアとでは体力も全然違う。練習量の少ない一般アマチュアがプロと同じことを行うのは土台無理があるのです。しかもバンカー練習場は少ないから、いつもと違うスイング、つまりオープンスタンスでフェースを目いっぱい開くスイングをコースに出てからぶっつけ本番でやるわけです。

──それでバンカーショットをプロは「やさしい」と言い、アマチュアは「苦手」という方が多いのですね。

久富 そうです。そもそもバンカーショットはグリーンに乗せるだけならそんなに難しいショットではありません。それを一般アマチュアが「難しい」「苦手」と感じてしまうのはプロと同じことを行おうとするからなんです。それに気づいてアマチュアならではの打ち方を覚えれば、バンカーの苦手意識は消えて2打目をバンカーに入れても慌てず、確実に3オンして2パットのボギーであがれるようになります。そうなれば、いつも私が言っているボギーオンのゴルフができるようになり、90をコンスタントに切れるようになります。

バンカーの苦手な人はヘッドスピードが足りていない

──プロと同じだけ練習量を積めない一般アマチュアが、プロと同じことを行おうとするのは無理があるということですね。それはわかりましたが、それと8番アイアンの長さのSWとどのような関係があるのですか。

久富 そうでした。話をクラブの長さに戻しましょう。なぜSWを8番アイアンの長さにしたかというと、それはヘッドスピードを上げるためです。プロがオープンフェースにする理由は2つあり、1つはロフトを寝かせるため、もう1つはヒールから落として砂の抵抗を少なくするためです。

ところがアマチュアは普段通りのスクエアスタンス、スクエアフェースで打ちたいわけですから、この2つの効能を別のものに求める必要が出てきます。1つ目のロフト対策ですが、これは後で説明しましょう。問題は2つ目です。スクエアに構えたときにはどうしてもバンスの接地面積が大きくなってしまい、砂の抵抗が増して力がないとヘッドが弾かれてしまいます。私の生徒さんは還暦を過ぎた人ばかりなので、これは問題です。

──なるほど。それで8番アイアンの長さにして、ヘッドスピードを上げやすくしたわけですね。

久富 正解です。バンカーショットをスクエアスタンス、スクエアフェースで打つときは普段よりヘッドスピードを上げなければいけないので、より高いところからヘッドを落とす、つまりより大きなスイングをしないといけないのです。ですがSWが苦手な人はもともとヘッドスピードが不足している方が多いのです。

──なぜヘッドスピード不足の人が多いのですか?

久富 それは失敗の記憶からくる恐怖心が原因です。皆さん、こんな経験はありませんか。1打目のバンカーショットを打ったらヘッドが砂に深く入り過ぎてバンカーから出ない。ガッカリしながら打ち直した第2打目が今度はクリーンヒットしてホームラン、OBとなってまたバンカーから打ち直しをしたといったことです。

──あります。この前もありました。ドライバーがナイスショットしてフェアウエーキープ、2打目をショートアイアンで打ったらわずかにドローして左のガードバンカーへ、そこから大たたきしてダブルパーです。

久富 よくあることです。バンカーの1打目でザックリするとまた出ないのではないかと不安になり、今度はザックリしないように砂を薄く取ろうとする。そうするとクリーンヒットしてしまうというわけです。これをやってしまうとバンカー内で大きなスイングができなくなり、ヘッドスピードも落ちてしまいます。ヘッドスピードが落ちるとまたバンカーから出ない。結局バンカーが「苦手」になってしまいます。

今日の優勝者は8番アイアンの長さのSWを手に入れることができますが、普段はなかなか難しいと思いますので、後ほどバンカー内でも大きなスイングができるようになる練習ドリルをお教えします。

──ぜひお願いします。バンカーショットが苦手になってしまったのも、大きなスイングができていないからかもしれません。

(次回は9月12日に掲載予定。文:並木繁、撮影協力:赤羽ゴルフ倶楽部)

 ひさとみ・あきつぐ 1951年生まれ。日本大学ゴルフ部では主将を務め、アマチュアとして全英オープンの予選出場の経験を持つ。独自のゴルフ理論を展開し、これまでに多くのアマチュアをシングル入りさせている。全国に厚い信奉者がいるアマチュア向けレッスンの実力者。著書は多数。ベストセラーに「月いちゴルファーが、あっという間に80台で上がれる法」(日経プレミアシリーズ)がある。指導を受けたい人は、hisatomi-golf@jcom.home.ne.jpまで。
書斎のゴルフ」は、国内唯一の「読むゴルフ誌」として異彩を放ってきました。これからもゴルフの奥深さを味わい、真にゴルフを上達したいと願う読者の方々に向け、ゴルフの本質や神髄に迫る記事を中心にお届けしてまいります。定期購読はこちらへ。https://www.fujisan.co.jp/product/1281683064/

書斎のゴルフ VOL.43 奇跡を呼ぶ寄せとパット (日経ムック)

出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,404円 (税込み)

あなたのゴルフが100を切れない理由 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 久富 章嗣
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 810円 (税込み)

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