ラピート台車亀裂 南海の成長戦略に影響懸念

大阪・難波と関西国際空港を結ぶ南海電気鉄道の特急「ラピート」の台車で亀裂が相次いで見つかった問題で、同社の経営の先行きに懸念も出ている。ラピートは関空から訪日客を大阪中心部に運ぶ大動脈のひとつで、南海の顔といえる存在だ。国土交通省の運輸安全委員会が調査を進めており、安全面への不安が高まるようだと利用者の離反につながりかねない。
30日の記者会見で説明した南海の梶谷知志・鉄道営業本部長は「ラピートは(南海の)ひとつのブランド。安全最優先でやってきたが今回のようなことになり重く受け止めている」と述べた。
国交省が26日に台車で約14センチの亀裂が見つかったと明らかにした。運輸安全委員会は事故につながる恐れがあったとして重大インシデントに認定。南海が発見したのは24日で、その時点で公表しなかった。その後も関連情報のしっかりした確認まで時間を要したといい、約1週間後の30日まで記者会見を開かなかった。この間には緊急点検で別の台車でも10センチ弱(南海は30日に約7センチに修正)の亀裂が見つかるなどした。
大阪中心部と関空を結ぶ鉄道は南海とJRが2本柱だ。南海の代名詞がラピートで、大阪中心部南側の繁華街ミナミ(難波地区)と関空を6両編成で約38分の速さで結ぶ。2018年度の乗車人員はここ5年で7割増の380万人、収入は11億円規模にのぼる。

車体は先頭が丸型で鉄仮面をかぶったような形、色は鮮やかな青色で、アニメに出てきそうな風貌だ。大人から子どもまで幅広い人気がある。
今のところ亀裂問題による運行上の影響は大きく出ていない。南海は6編成を保有しており、亀裂が見つかった2編成を点検中。現在4編成によって通常運行している。
今回の亀裂問題を国交省が明らかにした26日以降もラピートの乗車率は50%台といい、今回の問題が知られる前と大きな変化はないという。株式市場でも南海の株価はほぼ横ばいだ。
もっとも運輸安全委員会は「脱線につながる可能性もあった」と指摘した。調査は今後も続き、この結果が厳しいものとなれば安全輸送への信頼が揺らぐ。
大阪では31年に大阪中心部を縦断する、なにわ筋線が開通する予定だ。南海はJR西日本と一部を共用する形で、関空から大阪中心部北側のキタ(梅田地区)に乗り入れることで利便性を高めたい考えだ。なにわ筋線の開通に向けた新型特急の検討にも入っている。

この成長戦略を実現していくには、それまでにラピートの成長をいかに続けていけるかが鍵を握っている。
ラピートは今年が運行25周年で、多くの関連イベントが予定されている。「(イベントは)感謝の気持ちとしてやっているので、お客様のご理解のもとで進めていきたい」(梶谷・鉄道営業本部長)。引き続き南海の顔としての活躍を期すなか、今回の亀裂問題が経営に与える影響はなお予断を許さない。
(中西誠)