滴滴、上海でロボタクシー 5.5億人走行データ強み
トヨタなど大手と連携

貿易摩擦
アジアBiz
2019/8/30 23:07
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ロボタクシーの運行を発表した滴滴の張博CTO(上海、30日)

ロボタクシーの運行を発表した滴滴の張博CTO(上海、30日)

【上海=多部田俊輔】中国ライドシェア最大手の滴滴出行は30日、人が操作しない完全自動運転の「レベル4」のロボタクシーを限定されたエリアで運行すると発表した。滴滴は世界最多の5億5千万人の利用者による圧倒的な走行データを武器に、トヨタ自動車など自動車大手と連携して自動運転車両の開発から運用、保守サービスまで手掛ける構想を描く。自動運転で主導権を握り、モビリティーサービス分野での覇権を狙う。

「中国で初めての無人運転の商業化を実現するだろう」。滴滴の張博・最高技術責任者(CTO)は30日、上海で開催中の世界人工知能(AI)大会の講演で力を込めた。上海市政府と協力し、同市郊外の嘉定区で年内にもレベル4の車両30台を使い、滴滴のアプリで無人運転サービスを提供する。2~3年内に国内3都市に広げ、海外進出も視野に入れる。

自動運転を巡る滴滴の強みは圧倒的な走行データだ。自動運転の核となるAIが様々な条件下で最適な運転を実現するには車両に搭載したカメラやセンサーで収集した各種データの量がカギを握る。2012年創業の滴滴は、国内大手との合併や米ウーバーテクノロジーズの中国事業買収を経て、中国のライドシェア市場を寡占。5億5千万人の利用者を抱え登録運転手は3千万人を超える。膨大なデータを使って警察などと渋滞緩和にも取り組むほどだ。

「自動運転は企業間の競争ではなく、アライアンス間の競争になるだろう」(張CTO)。滴滴は自動車大手などとの連携を重視する。8月に自動運転事業を分社化し、自動車大手などとの共同開発を進める体制を整えており、アライアンス加盟企業の資金や技術を投入して開発を加速する。

張CTOが説明した図には中国の自動車、電池、通信の大手のほか外資の名前がずらりと並ぶ。滴滴への出資を既に発表したトヨタに加え、独フォルクスワーゲン、独ボッシュ、カナダの自動車部品大手、マグナ・インターナショナルなどだ。

滴滴が18年に立ち上げたライドシェアの企業連合「洪流連盟(Dアライアンス)」がベースとなっているようだ。滴滴は連携企業と自動運転車の共同開発に加え、自動運転車の購入やリース、保守サービスまで含む総合的なサービスを手掛ける方針だ。

中国ではネット検索中国最大手の百度(バイドゥ)が17年に自動運転の開発連合「アポロ計画」を立ち上げ、国家プロジェクトとして中国政府の支援を受ける。150社以上が参加し、年内にロボタクシーの試験運行を湖南省で始める計画を持つ。しかしここへ来て16年に自動運転開発を始めた滴滴が、走行データを武器に一気に追い抜く可能性も出てきた。

むしろライバルは自動運転の開発で先行する米国勢だ。米グーグルの持ち株会社、アルファベット傘下のウェイモや米ゼネラル・モーターズ(GM)系のGMクルーズなどで、程維・最高経営責任者(CEO)は29日の講演会で「米国との競争に備え、もっと多くの投資を増やさなければならない」と指摘した。

ウェイモは09年に自動運転開発に着手し、既に累計で1000万マイル(約1600万キロメートル)を超える公道走行試験のデータを持つとされる。これは地球と月の間を21往復するのに相当する距離だ。規模は限定されているが18年末には自動運転車を使った商用サービス「ウェイモ・ワン」を米アリゾナ州で始めている。

米ライドシェア最大手のウーバーテクノロジーズは18年3月に米国での公道走行試験中に起こした死亡事故の影響で開発が一時停滞したが、18年8月にはトヨタとの提携を拡大。21年をメドに両社の自動運転システムを搭載したライドシェア向けの完全自動運転車を実用化する計画を持つ。

米中貿易戦争も影響しそうだ。滴滴は米国にも自動運転の開発拠点を持つ。ライドシェアで世界展開を進めており、ロボタクシーも将来的には世界進出するとみられるが、米中対立が悪影響を及ぼす恐れもある。

■滴滴CEO「資金投入を増やす」 対米競争に備え

滴滴出行の程維CEO(上海、29日)

滴滴出行の程維CEO(上海、29日)

滴滴出行の創業者の程維・最高経営責任者(CEO)は29日に上海で開幕した世界人工知能(AI)大会で、自動運転事業の分社化をテコに自動車メーカーなどとの連携で資金などの投入を増やし、米国企業との競争に備える考えを示した。主な発言は以下の通り。

「(自動運転などで世界をリードするには)投資を増やす必要がある。米国との競争に備え、我々はもっと多くの投資を増やさなければならない。米国では自動運転分野に毎年50億ドル(約5300億円)の資金が投じられており、70%は企業の資金で、30%はファンドの資金だ」

「我々は将来、自動運転の先進技術により多くの資金を投じる。自動運転事業をこのほど分社化しており、(他社やファンドとともに技術や人材などの)より多くの経営資源を投入する。なるべく早く一般の消費者が滴滴のアプリで無人運転の車両を利用できるようにしたい」

「自動車は100年前に生まれた偉大な発明だが、現在は交通事故や渋滞などの多くの課題を抱えている。AIやビッグデータ解析を使えば、運転手の疲労を把握できる。すでに最新の自動運転のは普通の運転手のレベルに近づいており、5~10年で交通事故を大幅に減らすことができるだろう」

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