南海の台車亀裂 異音報告も「支障ない」と運行継続

南海電鉄の特急「ラピート」の台車で亀裂が見つかった問題で、同社は30日記者会見し、異音に気付いた車掌から報告を受けた運行管理の担当者が「聞いたことがある音なので、運転に支障はない」と判断したと明らかにした。社内規定に沿って車両に乗り込んだ検査担当者を通じて異音や振動を確認した結果、運転の継続を決めたという。
問題を受けて初めて会見した梶谷知志鉄道営業本部長は「利用者や関係者に心配をかけ、深くおわびする」と謝罪した。ただ、同社側は重大インシデントと認定した運輸安全委員会が脱線の可能性を指摘した点について「亀裂が入ったまま数十万キロ走行しても問題はなく、破断のおそれにはほど遠かった」(吉田実車両部長)と反論し、見解の食い違いも見せた。
亀裂が見つかったのは、主電動機(モーター)を支える台車の「主電動機受座」と呼ばれる箇所の溶接部分。約710キロのモーターを支える部分で、運輸安全委は「亀裂が深くなればモーターが落下し、脱線する可能性があった」と指摘した。
ラピートでは、23日夕に車掌が金属がこすれるような音に気がつき、運行管理を担当する運輸指令に報告。検査担当者2人が同乗して走行中に目視で点検したが異常は見つからず、終電まで走り続けた。2号車の台車に約14センチの亀裂が見つかったのは24日未明で、車掌が異音に気付いてから約240キロ走行していた。
南海によると、亀裂が見つかったラピートの車掌は運輸指令に報告する際、「音が通常より大きく、乗客に不快な思いをさせる恐れがある」などと報告した。これに対し、運輸指令は「これまでに聞いたことのある音なので、運転に支障はない」などと判断し、運行を継続したという。

異音と亀裂の因果関係については「台車の亀裂と車掌が音を聞いた場所が違う」などとして否定した。
一方、台車の安全を確保するため、亀裂が認められた箇所を検査マニュアルの重点箇所に加えるほか、6編成あるラピートの台車計36台をより安全性の高い台車に取り換える方針。メーカーと協議し、亀裂が入らない設計を検討する。時期は未定としている。
南海によると、29日の検査で新たに6センチの亀裂が見つかり、2017年以降、ラピートの台車で確認された亀裂は計8カ所となった。いずれも主電動機受座の溶接部分だったという。ラピート以外の通勤電車でも14年度以降、10カ所以上の亀裂があったことが分かっている。