日本医師会、医療費削減の健保連提言を痛烈批判

BP速報
2019/8/30 16:47
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日経メディカル Online

日本医師会(日医)は、健康保険組合連合会(健保連)による政策提言を痛烈に批判する見解を28日発表した。健保連の政策提言とは、2020年度診療報酬改定に向けたもので、健保組合のレセプト(診療報酬明細書)データ分析に基づいて、以下の5項目が提言されていた。

(1)機能強化加算のあり方について
(2)生活習慣病治療薬の適正な選択(フォーミュラリー)の導入
(3)繰り返し利用可能な処方箋(リフィル処方)の導入
(4)調剤報酬のあり方について
(5)花粉症治療薬の保険適用範囲について

健保連による政策提言を批判する日医の松本吉郎氏

健保連による政策提言を批判する日医の松本吉郎氏

日医常任理事の松本吉郎氏は、まず「レセプトは診療報酬の請求書であり、レセプトの分析だけでは、診療行為の理由・背景が不明。そのため、中央社会保険医療協議会(中医協)で検証調査をし、その結果を踏まえた丁寧な議論を行っている」と説明。その上で「健保連の見解は、このような中医協の議論をないがしろにするもの。レセプト分析は傍証でしかなく、検証調査などでしっかり分析した上で発言すべきだ」と批判した。

加えて「患者が早期にかかりつけ医を受診し、かかりつけ医が適切な疾病管理をすることが、無駄な薬剤費の削減につながる。そのような、かかりつけ医の役割を評価すべきであり、薬価や調剤技術料に比較して、医師による初診・再診料、指導管理料、処方箋料が相対的に低いことが問題」とした。ただし、かかりつけ医の介入による薬剤費抑制効果の根拠は示さなかった。

機能強化加算の在り方として健保連は、同加算を算定された患者の約6割は受診回数が1回のみで再診がなく、約6割の患者が2つ以上の医療機関で算定されていたこと、算定されていた疾病は急性気管支炎が全体の20%と最も多く、継続的な支援が必要な高血圧症、糖尿病、脂質異常症は全体の5%に満たなかったというレセプト分析を公表。そのデータを基に、生活習慣病などの慢性疾患を有し、継続的な管理が必要な患者のみを対象にするよう、機能強化加算の算定要件の見直しを求めていた。

これに対して松本氏は「この加算は、かかりつけ医機能を強化した医療機関の体制を評価したもの」であり、「健保連はその位置付けを理解していない」と非難した。

■「薬価収載薬に使用制限設けるべきではない」

フォーミュラリー(医学的な妥当性を前提に、経済性にも優れた薬剤の処方を推進する指針)に関しては「効能効果が大きく変わらないのに高い薬価が設定されている医薬品があることが、そもそも問題」とし、フォーミュラリーに関して保険者、薬局がそれぞれ勝手に定義している点も問題視した。

松本氏は「中医協で議論して決めている薬価収載医薬品がナショナルフォーミュラリ。フォーミュラリーと称して薬価収載薬の使用に制限を設けることは、被保険者への背信行為」と述べた。松本氏は一定の自由度を持つフォーミュラリーを学会などが策定することまでは否定しなかったものの、「診療報酬の評価はなじまない」と断言した。

リフィル処方(一定期間繰り返し使用できる処方箋)についても否定的だった。かかりつけ医は患者ごとに治療計画を立て、リハビリテーションや運動や栄養など総合的な指導を行っており、薬の処方だけをしているわけではないとした上で「生活習慣病に対してリフィル処方をする医師は、患者をちゃんと診ていない医師」と断言。かかりつけ薬剤師に限定したリフィル処方を診療報酬制度に導入すべきという健保連の主張は、「医療費削減のみを狙った提案であり、適当とは思えない」と批判した。

花粉症治療薬の保険適用範囲の見直しについては、「スイッチOTC(一般用医薬品)化したからといって、医療用医薬品からはずすべきではない」と強調。加えて「軽症患者を保険適用からはずし、重篤な疾患のみを保険適用とする考え方は、経済的弱者の受診抑制、治療が難しい患者の見逃し、受診を我慢することでの重症化などの懸念がある。国民皆保険の崩壊にもつながりかねない」とけん制した。

(日経メディカル 小板橋律子)

[日経メディカル Online 2019年8月29日掲載]

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