2019年9月16日(月)

アマゾン火災 欧州・ブラジルの対立、経済にも波及

ヨーロッパ
中南米
2019/8/29 21:54
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焼き畑の急増が森林火災の一因とみられている(ブラジル北部パラ州)

焼き畑の急増が森林火災の一因とみられている(ブラジル北部パラ州)

【サンパウロ=外山尚之、ブリュッセル=竹内康雄】ブラジル北部アマゾン地域の森林火災が拡大するなか、ブラジルと欧州の対立が深まっている。経済成長を優先するブラジルのボルソナロ政権は森林開発を進め、アマゾンを保護すべきだと主張する欧州に「内政干渉だ」と強く反発している。欧州との関係悪化は経済成長の足かせとなるリスクもはらむ。

ボルソナロ大統領は28日、アマゾン地域の関係国が火災への対策を議論する会合を9月6日にコロンビアで開くと発表した。アマゾン火災は南米の問題だとし、フランスのマクロン大統領について「私をうそつきと呼んだ」と非難した。マクロン氏は8月26日に「ブラジル国民が職務にふさわしい大統領を得られるよう願うばかりだ」と発言していた。

両者はアマゾンの森林火災を巡り応酬を繰り広げている。地球温暖化対策を重視するマクロン氏は「我々の家が燃えている」と述べ、8月下旬に仏ビアリッツで開いた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で2千万ドル(約21億円)の緊急支援のとりまとめを主導した。

一方、ボルソナロ氏は「アマゾンはブラジル国民のものだ」と繰り返し訴えている。マクロン氏の発言は「植民地主義を思い起こさせる」として、マクロン氏が謝罪しない限り緊急支援は受け取らないと突っぱねた。

ブラジルでは乾期の森林火災は珍しくない。政府は「焼き畑の時期にあたり、火災は例年並みだ」と主張する。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、今年のアマゾン地域での火災発生件数は直近のピークだった2010年の6割程度だ。

農地拡大のための森林伐採により、森林面積は急減している(ブラジル北部パラ州)

農地拡大のための森林伐採により、森林面積は急減している(ブラジル北部パラ州)

それにもかかわらず、国際的な関心が集まるのはボルソナロ氏に一因がある。1月に就任した右派のボルソナロ氏は地球温暖化に懐疑的な見方を示し、環境保護より経済開発を優先する姿勢だ。18年の大統領選では「先住民の土地や環境保護政策が開発の邪魔になっている」と述べ、アマゾンの土地売買や農地開発を容易にする規制緩和を行うと公約した。

政権発足後は道路を舗装し、農牧地や鉱山の開発を後押しする一方、違法伐採を監視する政府機関の予算を削減した。金の違法採掘を合法化し、国が管理する方針も示した。政権が森林開発を容認したと受け止められ、違法伐採や焼き畑の急増につながった。

火災の多くは焼き畑の火が燃え移ったことが原因とみられ、INPEによると、7月の森林伐採面積は前年同月比3.8倍に上る。ボルソナロ氏はこのデータを発表したINPE所長を解任した。

ブラジルは南部に産業が集中し、森林が広がる北部は貧しい。北部9州の平均月収は1810レアル(約4万6千円)で、最大都市サンパウロの6割強にすぎない。ボルソナロ氏は歴代左派政権のような分配ではなく、経済振興による格差是正を打ち出している。

もっとも、ボルソナロ氏の強硬姿勢は経済に悪影響を及ぼしかねない。すでに欧米の衣料・靴メーカーは相次ぎ、ブラジル製素材の発注を停止する方針を発表した。フィンランドはブラジルからの牛肉輸入停止を検討しており、9月半ばの欧州連合(EU)財務相会合で議論したい考えだ。

EUと、ブラジルを含む南米4カ国の関税同盟、南米南部共同市場(メルコスル)が6月に政治合意した自由貿易協定(FTA)を見直す動きも浮上している。アマゾン火災への対応を理由に、フランスやアイルランドはFTAに反対の意向を表明しており、ボルソナロ政権が成長戦略の根幹とするFTA網の拡大に影響が及び始めている。

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