エボラ感染拡大に危機感、拡散阻止に全力 - 日本経済新聞
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エボラ感染拡大に危機感、拡散阻止に全力

アフリカのコンゴ民主共和国(コンゴ、旧ザイール)で流行中のエボラ出血熱を巡り、国境を越えた感染拡大への危機感が高まっている。6月には隣国ウガンダで感染が確認され、世界保健機関(WHO)と周辺国は拡散阻止に全力を挙げる。横浜市で開催中の第7回アフリカ開発会議(TICAD)でも感染症対策など保健衛生の取り組み強化を求める声が相次いだ。

「(私たちの)保健システムは脆弱だが、エイズ、マラリア、エボラなどに対処しなければならない」。29日、TICADの全体会合でボツワナのダウ外務・国際協力相は現在の保健、公衆衛生の水準への危機感を表明した。同時に全ての人が適切に医療・保健サービスを受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた協力の必要性も訴えた。

「最大のリスクは周辺国に広がっていくことだ」。WHOのモエティ・アフリカ地域事務局長は29日、日本経済新聞の取材に応じ、コンゴとルワンダ間など頻繁な人の往来がエボラ出血熱の感染拡大リスクを高めているとの認識を表明した。

エボラ出血熱は1970年代に初めて感染が記録され過去に何度も流行を繰り返してきた。2014~16年には西アフリカで1万1千人以上が犠牲になった。

今回のコンゴでの流行は14~16年に次ぐ深刻さで18年夏以降、今月20日までに約2800人の感染が確認され、1961人が死亡した。6月にはウガンダでの感染・死亡例も見つかった。WHOは7月、国際的な対応が必要になることを意味する緊急事態宣言を出した。

周辺国は国境での監視、検疫を強化しており、現状ではおおむねコンゴ国内での封じ込めに成功している。ただ、流行地域のコンゴ北東部では武装勢力が医療拠点や民家を襲撃するなど社会不安が高まっている。住民の当局への不信やエボラ出血熱に対する知識の不足が、感染例の発見やワクチン接種の必要な「接触者」の追跡の遅れにつながっている。

危機のさなかの光明は未承認ながらコンゴ政府が使用に同意した米メルク製のワクチンが高い効果を発揮していることだ。WHOによると、ワクチンを接種した症例の97%以上でウイルスへの免疫を獲得できたという。

アフリカ大陸では50年の人口が25億人へと倍増する見通しだ。清潔な水や十分な栄養の確保など保健衛生を巡る懸念が膨らんでいる。

29日のTICADでは、米マイクロソフト創業者で、慈善事業に取り組むビル・ゲイツ氏がビデオメッセージを寄せ、様々な感染症を防ぐための予防接種推進に向けた資金拠出など取り組みの強化を訴えた。安倍晋三首相は28日の演説で「アフリカで新たに300万人にUHCを及ぼすことを約束する」と強調した。

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