味わいの昭和VS元気な平成(演芸評)
米朝一門会「令和夏の陣」

関西タイムライン
2019/8/30 7:00
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スマホもネットもなかった昭和。平成との違いは大きい。落語の世界はどうだろうか。「令和夏の陣・昭和入門軍vs平成入門軍」と銘打った「米朝一門会」(10日昼夜・サンケイホールブリーゼ)は比較も興味深い対決。芸歴・年齢とも平均20年の差がある2公演は、それぞれの流儀と継承の面白さを浮き彫りにした。

熟練の語りを披露した「昭和入門軍」。雀三郎がそのトリを飾った=坪内喜則撮影

熟練の語りを披露した「昭和入門軍」。雀三郎がそのトリを飾った=坪内喜則撮影

昼の昭和組は看板がずらり。米朝や枝雀の薫陶がしみこんだ自然な本格話芸で当たり前のようにわかせる。桂米団治のお茶目(ちゃめ)な「狸(たぬき)の賽(さい)」から盛り上げ団朝の「宗論」はなりきるおかしみが説得力になる。塩鯛の「強情灸(きゅう)」はやせ我慢の演技に滑稽味満点。「花筏(いかだ)」の南光は語りの威力で相撲場の臨場感を生み、千朝の「肝つぶし」は切ない情が尾をひいた。トリは雀三郎。物知らずの喜六が実に愛らしい「遊山船」で浪花の夏風景が夢のよう。ベテラン勢はお囃子(はやし)もふんだん。庶民の心根を情趣と共に描いてさすがであった。

平成組は注目の女流・二葉から。吉弥ら台頭する実力派が並び、米紫の「厩(うまや)火事」は振幅激しい心理描写で大ウケ。トリの南天も「つぼ算」で計算のからくりを相棒もわかっていない、そんな独自解釈を加え爆笑させた。みな、継いだ噺(はなし)を誇張やギャグで笑わせようと懸命。やり過ぎもあったが今の感覚と前のめりの自我と活力でひきこんだ。

どちらも客は喜び、一見引き分け。だが、落語は重ねた年数がものを言う。熟練の面々は語りの味わいで断然光り、豊かな人生経験を隠し味に滋味と醍醐味を届けた。ならば、逆に平成世代はこれから伸びしろがいっぱいだ。手探りでも、それは昭和世代があがいてもがいて通った道でもあるはずだ。

(演芸ジャーナリスト やまだ りよこ)

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