博物館の役割問い直す 京都で国際会議、記念展
文化の風

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2019/8/30 7:01
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各国の博物館・美術館関係者が集う国際博物館会議(ICOM(アイコム))京都大会が9月1~7日、京都市で開かれるのを記念し、様々な記念イベントが催される。京都国立博物館と京都府京都文化博物館による展示は、今大会のテーマ「文化をつなぐミュージアム―伝統を未来へ―」に沿って博物館の役割を見つめ直そうとする企画だ。

京都国立博物館に展示されている「風神雷神図屏風」(国宝、建仁寺蔵)

京都国立博物館に展示されている「風神雷神図屏風」(国宝、建仁寺蔵)

日本で初の開催

ICOMはパリに本部を置き、約140カ国・地域から約4万4500人が加入している。3年に一度、世界大会を開いており今回で25回目。日本では初開催だ。メイン会場は国立京都国際会館で約3千人の参加を見込む。「持続可能な未来の共創」「博物館定義の再考」など4つの全体会合を軸に意見を交わす。

京都国立博物館は特別企画「京博寄託の名宝」を9月16日まで開く。収蔵品の中から、外部から預かった文化財139件を出展。国宝が36件、重文が59件に上る、ぜいたくな内容だ。

今回の特別企画では「伝源頼朝像」(左)と「伝平重盛像」も展示されている(国宝、神護寺蔵)

今回の特別企画では「伝源頼朝像」(左)と「伝平重盛像」も展示されている(国宝、神護寺蔵)

展示室で人だかりができているのは、2020年東京五輪・パラリンピック記念500円硬貨のデザインに採用された俵屋宗達筆「風神雷神図屏風」(国宝、建仁寺蔵)。海北友松筆「雲龍図」(重文、同)も大迫力で迫る。「伝源頼朝像」(国宝、神護寺蔵)は日本の肖像画の傑作の一つで知名度は抜群だ。いずれも数年おきに展示されるが、一堂に会する機会は少ないという。

呉孟晋(くれもとゆき)・主任研究員は「今大会のテーマである『文化をつなぐ』役割を博物館が果たす上で、重要なのが寄託制度だ」と話す。

同館の前身、帝国京都博物館が開館したのは1897年(明治30年)。明治初期の廃仏毀釈の余波で文化財が危機に直面する中、社寺に代わって宝物を保管して流出や散逸を防ぎ、盗難や災害から守る役割を担った。現在も収蔵する1万4500件の半数近くを寄託品が占めるという。

出展品の一つ「雲龍図」(重文、建仁寺蔵)

出展品の一つ「雲龍図」(重文、建仁寺蔵)

「寄託を通じて文化財保護を支援し、寺社と一般の人々をつなぐ場として機能してきた当館の原点に立ち戻るとともに、京都の文化力を世界の人々に情報発信したい」と呉さん。「今大会に参加する海外の博物館関係者に日本の現状を見てもらい、忌憚(きたん)のない議論をしたい」と期待する。

継承の道たどる

京都文化博物館は2つの企画展「京の歴史をつなぐ」(9月29日まで)、「文博界隈(かいわい)の近代建築と地域事業」(8月31日~10月27日)を並行して開く。

「京の歴史をつなぐ」は、時代の変化とともに京都の文化や景観にどんな価値が見いだされ、現代に継承されてきたのかを探る。題材の一つが平安京の南にそびえていた羅城門。朽ちて崩壊した後、どんなイメージで語られたのか、その系譜を復元模型や考古資料、絵図や黒沢明監督の映画「羅生門」のポスターでたどる。

西山剛学芸員は「文化遺産自体が経験してきた歴史に注目してほしい」と語る。フロアを京都の地図に見立てて展示を配置し、雲をイメージしたタペストリーで仕切るなど、凝った会場デザインも見どころだ。

「文博界隈の近代建築と地域事業」は、同館周辺に数多い近代建築の利用と継承がテーマ。人々がどのように取り組んできたのかを写真や模型、設計図、建材などの資料で紹介する。

地元のまちづくり組織と5年以上前から議論を重ねてきた成果の一つという。村野正景学芸員は「博物館ができることは多様な見解や価値観を紹介し、人々のコミュニケーションを可能にすること」と強調。「地域と連携した参加型展示を通じ、普段なら届かないかもしれない声を様々な人に届けたい」と語る。

(編集委員 竹内義治)

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