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48歳杉浦、初舞台へギア パラ自転車世界王者

Tokyo2020
2019/8/29 16:30
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開幕まであと1年に迫った東京パラリンピックの自転車競技で金メダルを期待されるのが、48歳の杉浦佳子(楽天ソシオビジネス)だ。3年前に自転車で転倒し高次脳機能障害を負いながら、パラに挑戦すると2017年、18年のロード世界選手権で金メダルとすぐに頭角を現した。初のパラリンピック出場に向け「周囲に助けてもらうことで、欠点や弱点は克服できると証明したい」と胸を躍らせている。

杉浦は2017、18年と世界選手権で優勝、一躍東京パラリンピックの金メダル候補に名乗りを上げた(6月、静岡県)

杉浦は2017、18年と世界選手権で優勝、一躍東京パラリンピックの金メダル候補に名乗りを上げた(6月、静岡県)

3度目の優勝を飾った6月末の日本選手権ロード大会の会場は、富士スピードウェイ(静岡県小山町)だった。細かなコースこそ異なるものの、東京パラのロード種目の発着点となる舞台を走り、本番に向けた大きな収穫を得た。

起伏が激しく、下りのすぐ後にきついコーナーがある難コース。障害の影響で、ブレーキを使うべきかなどとっさの判断が苦手な杉浦はレース前、「このコーナーは曲がれない。私には無理」と不安と恐怖を抱いていた。

だが、レース前日にコーチと2度の試走をして細かなライン取りをたたき込まれ、走り方を丸暗記したのが奏功した。「一番苦手なコーナリングも含め、全て指示通りに走れた。走り込めば、まだタイムは上がると思う」

身長156センチと小柄で、瞬発力勝負ではパワーのある海外選手に比べて分が悪い。杉浦はスピードの出る平たんコースよりも起伏のあるコースが得意で、2度制した世界選手権はいずれも坂があった。東京パラ本番会場での予行演習を経て「私に向いているのかな。このコース好きかも、と思えてメンタル面でもプラスになった」と表情は明るくなった。

49歳で迎える東京パラに向け「年齢を重ねてからも成長できる姿を見せ、支えてくれる人たちの笑顔が見たい」と語る

49歳で迎える東京パラに向け「年齢を重ねてからも成長できる姿を見せ、支えてくれる人たちの笑顔が見たい」と語る

薬剤師として働きながら、30代から趣味で始めたトライアスロンに打ち込んでいた16年4月、自転車のレース中に転倒して頭蓋骨や鎖骨を骨折した。一時は生死の境をさまよう大けがを乗り越え、知人の紹介でパラ自転車と出合った。

右半身には今もまひが残り、昨年は離婚も経験したが、境遇を悲観することはない。「私が健常者だったらここまで来られていない。パラ競技を始めなければ、普通のおばさんがこんなに多くの人から『がんばれ』と言ってもらえる機会はなかった」

昨秋、四肢障害の「Cクラス」で2番目に重いC2から、1つ軽いC3へ変更となった。実際のタイムに障害に応じた係数をかけ算して順位を決めるため、競技上は不利となる。それでも「障害が悪化することはないと、医師からお墨付きをもらえたのはうれしい。軽いクラスでしっかり戦いたい」とあくまで前向きだ。

今季は9月11日からオランダで開かれる世界選手権に照準を定める。3年連続優勝がかかる会場は苦手とする平たんなコース。「アルカンシェル(優勝ジャージー)を3回着られたら」と頂点を目指す大会は、取り組んできたパワーアップの成果を試す舞台ともなる。

週2回のウエートトレーニングで本格的な肉体強化に着手して1年半あまり。レースでは一段重いギアを踏めるようになり、20分間全力でこいだ時の平均出力は昨年の197ワットから今年は210ワットにまで向上。課題克服に手応えを得てオランダへと乗り込む。

「一番輝くメダルが目標」という東京パラリンピックを49歳で迎える杉浦は「年齢を重ねてからでも成長できる姿を見せ、支えてくれる人たちの喜ぶ笑顔を見たい」。人生の充実感を日々かみしめながら、シンデレラストーリーを駆け上がる。

(常広文太)

▼東京パラリンピックの自転車競技
4種類のクラスに分かれて実施される。通常の二輪自転車に乗るCクラス(四肢障害)のほか、三輪自転車を使うTクラス(重度の四肢障害)、2人乗りのタンデム自転車で前に乗る晴眼者と共に競技するBクラス(視覚障害)、手でこぐハンドサイクルを使うHクラス(下半身不随など)がある。
障害の重さにより、CとHは5段階、Tは2段階に細分化される。複数のクラスを統合して行う競技では、実際のタイムにクラスごとに設定された係数をかけ算したタイムで順位を決める。
CとBにはバンクを走るトラック種目と、一般道を走るロード種目があり、TとHはロードのみ。Cの杉浦佳子が得意とするロードには、個人で走ったタイムを競うタイムトライアルと、ペース配分や駆け引きも勝負の鍵を握る集団によるロードレースがある。

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