朴前大統領の実刑判決破棄 韓国最高裁、審理差し戻し

2019/8/29 16:04
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韓国最高裁は29日、韓国の前大統領、朴槿恵被告に収賄罪が成立すると判断した(ソウル、写真は2017年8月)=ロイター

韓国最高裁は29日、韓国の前大統領、朴槿恵被告に収賄罪が成立すると判断した(ソウル、写真は2017年8月)=ロイター

【ソウル=鈴木壮太郎】韓国最高裁は29日、韓国のサムスングループなどから巨額の賄賂を受け取ったとして収賄罪などに問われた前大統領、朴槿恵(パク・クネ)被告(67)について、懲役25年などの実刑とした二審判決を破棄し、ソウル高裁に審理を差し戻した。朴被告への贈賄罪で懲役2年6月、執行猶予4年の二審判決が下った李在鎔(イ・ジェヨン=サムスン電子副会長)被告(51)についても審理をソウル高裁に差し戻した。

審理差し戻しで、朴被告と、サムスングループの事実上の経営トップである李被告ともに量刑が重くなる可能性がある。

最高裁は、朴被告の収賄罪については二審の判断を踏襲し成立するとした。ただ一部、法律違反があったとして審理を差し戻した。

朴被告は、親友の崔順実(チェ・スンシル)被告(63)と共謀して乗馬選手だった崔氏の娘の活動費用をサムスングループに負担させ、一方の李被告は、崔被告が実質支配する財団を通じて活動費を支援したことが賄賂の罪に問われている。朴被告は2017年10月から裁判をボイコットし控訴もしなかったが、検察が控訴していた。

最高裁は、二審判決が大統領などの公職者については収賄罪と職権乱用などその他の犯罪を分けて宣告しなければならないとする公職選挙法に違反していると指摘した。収賄罪と他の罪を分けて判決を下せば、量刑は重くなる可能性がある。

李被告については、朴被告への贈賄がサムスングループの経営権継承作業への協力を求める「暗黙的な請託」だったと判断した。朴被告による「強要」だったとする二審の見方を退けた。

二審では朴被告の収賄額が約86億ウォン(約7億5000万円)と認定されたのに対し、李被告の贈賄額は約36億ウォンと判断が食い違った。サムスンが提供した馬3頭の購入費を賄賂に含めるかどうかの差だった。最高裁は馬の購入費も賄賂と認定し、李被告の贈賄額は総額で86億ウォンとした。韓国の法律では、横領額が50億ウォンを超えると最低5年以上の懲役刑を受けると定められている。差し戻し審で李被告の量刑も重くなる可能性がある。

最高裁が厳しい判断を下した底流には、朴被告の大統領弾劾を受けて誕生した文在寅(ムン・ジェイン)政権が保守政権下で定着した慣行や政策を一掃する「積弊清算」を進めていることがありそうだ。文政権は政府や公的企業などの主要ポストから前政権で任命された人材を外し、信条が近い革新系の人物を起用している。金命洙(キム・ミョンス)最高裁長官もそのひとりだ。昨年10月の徴用工訴訟では新日鉄住金(現日本製鉄)敗訴の確定判決を下した。

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韓国の保守派は、9月以降とみられていた今回の最高裁判決が29日に決まった背景に、文氏側近である曺国(チョ・グク)前民情首席秘書官の娘の不正入学疑惑から、目をそらす狙いがあったのではと疑っている。

サムスンには衝撃が走った。李被告の弁護人は同日、「最高裁が大統領からの要求による金品支援を賄賂と認定したのはやや残念だ」と語った。大統領からの「強要」だとする二審の見方が退けられ、見返りを期待した「請託」と判断されたためだ。

サムスンは裁判の長期化を警戒する。差し戻し審の判決には6カ月かかるとされる。主力の半導体が苦戦し、日本の韓国に対する輸出管理強化など経営環境が悪化する中で、新たな痛手となる。同社は「これから私たちは過去の過ちを繰り返さないよう企業本来の役割に専念する」とのコメントを発表した。

韓国財界からも懸念の声が上がる。全国経済人連合会(全経連)は「サムスンの経営活動の萎縮が韓国経済に悪影響を及ぼさないか懸念される」とのコメントを発表した。韓国経営者総協会は「今回の判決がサムスングループの経営に悪影響を及ぼさぬよう、政府の政策的・行政的配慮を臨む」とした。韓国メディアもサムスンの停滞が韓国経済に与える影響を懸念する論調が目立つ。

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