前橋汀子は進化を続ける、バッハの無伴奏全曲に挑む

2019/9/4 6:00
保存
共有
印刷
その他

バッハの無伴奏作品全6曲の演奏と収録に挑んだバイオリニストの前橋汀子

バッハの無伴奏作品全6曲の演奏と収録に挑んだバイオリニストの前橋汀子

国際派バイオリニストの草分けである前橋汀子は75歳の現在もソロ、室内楽公演を精力的にこなし、全国を飛び回る。特に今年はバイオリニストの金字塔であるJ・S・バッハの無伴奏ソナタ・パルティータ全6曲の全曲演奏会とアルバム制作を企画。「この年齢での挑戦は世界的にも例を見ない」と音楽関係者を驚かせた。前橋は「バイオリン人生にとって最も重要な音楽。人生経験・体験を曲にぶつけたい」と語る。

8月25日、約2000席の収容能力がある横浜市のみなとみらいホール大ホールに、一人で舞台に立つ前橋の姿があった。合計演奏時間が3時間近い、無伴奏ソナタ・パルティータの全6曲を1日で演奏する。この日のホールはほぼ満席。前橋は公演の前半、ソナタ第1番、パルティータ第1番、ソナタ第3番を演奏し、優雅さと厳粛さを兼ね備えた演奏で魅了した。

公演の後半はソナタ第2番からスタート。長大なフーガを抜群の技巧と表現力で乗り切ると、続くパルティータ第3番は天真爛漫(らんまん)さすら感じるほどの快演。最後のパルティータ第2番では、有名なシャコンヌを会場全体に響かせた。舞台上には万が一に備え楽譜も用意されたが、前橋は全曲暗譜で演奏した。「細部より曲の全体像をイメージして弾いた」と前橋は言う。全曲演奏会は10月19日に大阪、12月21日にトッパンホール(東京・文京)でも開かれる。

みなとみらいホール大ホールで演奏する前橋汀子(8月25日、横浜市)=KAJIMOTO提供

みなとみらいホール大ホールで演奏する前橋汀子(8月25日、横浜市)=KAJIMOTO提供

30年前の1989年、前橋は無伴奏全6曲を収録したCDを発表。レコード・アカデミー賞を受賞するなど高く評価されたが、今回あえて新録音に踏み切った。「2014年から始めた室内楽で培った和声のイメージを無伴奏に生かすことができた」。どん欲に成長・進化を続ける75歳の姿は、他の音楽家や聴衆にとっても大いに刺激になるはずだ。(岩崎貴行)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]