日韓、対話欠き袋小路 優遇除外で韓国はWTO提訴へ

日韓対立
2019/8/28 23:00
保存
共有
印刷
その他

出口の見えない対立は、日韓双方の経済に影を落とす

出口の見えない対立は、日韓双方の経済に影を落とす

政府は28日、軍事転用の恐れが低いとされる製品を自由に輸出できる「グループA(旧ホワイト国)」の対象国から、韓国を除く政令を施行した。7月に実施した半導体向け材料に続く輸出管理の厳格化となる。韓国は同日、世界貿易機関(WTO)に提訴する方針を改めて示した。対話の欠如が不信感を深める構図で、対立の出口が見えない。

【関連記事】文大統領、側近不祥事で窮地 対日強硬も政権浮揚せず

28日に施行された政令に基づき、韓国は輸出管理で「グループB」の扱いとなった。今後は韓国への輸出品について、経済産業省が軍事転用の疑いがあると判断すると審査を求める「キャッチオール(非リスト)規制」が適用される。もともと韓国が入っていた「グループA」にはこの規制がない。

28日、閣僚級会議を開いた韓国の李首相=聯合・共同

28日、閣僚級会議を開いた韓国の李首相=聯合・共同

韓国はすぐに反応した。同日、李洛淵(イ・ナギョン)首相の主宰で日本の措置に対応する閣僚級会議を開催。李氏は日本の措置について「WTO提訴を遅滞なく進める」と強調した。日本に依存する素材、部品、製造装置の国産化に向け、今後3年間で特別会計から5兆ウォン(約4360億円)を投入する方針も示した。

28日の政令施行により、日本から韓国への輸出ですぐに大きな問題が出るわけではない。あくまで疑わしい事例がある場合が審査の対象となるためだ。三菱商事の増一行最高財務責任者は「これまでもキャッチオール規制にかかる前提で社内チェックをかけている」として、足元での輸出への影響は限られるとみる。

ただ、両国政府の対立が激しくなれば経営者や消費者の心理が曇る。19年上半期(1~6月期)の対韓輸出は前年同期比11%減の2兆6千億円、輸入は同7%減の1兆6千億円。韓国からの訪日客は19年1~7月に前年同期比4%減となった。

深刻な対立は日韓双方の経済に影を落とす。ただ、現時点では対話が乏しく、解決の糸口を見いだせない状況にある。

韓国が再びグループAに戻るには、起点として局長級の政策対話を再開する必要がある。しかし世耕弘成経産相は7月12日に開かれた事務レベル会合で、韓国が事前の取り決めを破って会合の内容を公表したことを問題視している。輸出管理の当局は、対話のテーブルに着くためのやりとりすらできていない。

日韓の交渉のパイプも目詰まりしている。

韓国政府が22日に日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた際、大統領府関係者が問題視したのは8月15日の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の演説への日本の反応だった。日本の軟化を期待して強硬姿勢を抑えたのに「日本は態度を変えず、韓国の外交努力に応じなかった」という。

ところがそうした韓国側の意図は日本政府には伝わらなかった。日本の外務省幹部は「ボールは100%、韓国にある」と韓国側に元徴用工訴訟への対応を求める原則的な立場を崩さなかった。

かつては事務レベルによる水面下の調整がうまくいかなくなったときには政治家のパイプが機能した。福田赳夫氏や竹下登氏が会長を務めた超党派の日韓議員連盟が代表例だ。政府の外交とは一線を画しながらも、人間関係を糸口に打開策を探った。いま会長を務める額賀福志郎氏は27日に韓国の李首相と電話で協議したが、打開策は見いだせなかった。

日韓関係に詳しい元外交官の美根慶樹平和外交研究所代表は「韓国内に日本に詳しくない世代が増え、知日派も国内の厳しい世論にさらされている」と指摘する。

【関連記事】
日本政府、韓国を輸出管理の優遇から除外 政令を施行
米国防長官「日韓に大変失望」 関係改善求める
軍事協定破棄「韓国は再考を」 米国防総省幹部
米、アジア安保に危機感 中ロの脅威増大を懸念
「日本の不当な措置は遺憾」韓国首相
官房長官「安保の観点で必要」 輸出管理優遇の韓国除外
日韓議連会長の額賀氏、韓国首相の提案を拒否
保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]