文大統領側近、曺国(チョ・グク)前民情首席秘書官ののスキャンダルは政権にダメージを与えている=AP
【ソウル=鈴木壮太郎】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権には逆風が吹く。日本の輸出管理強化への対抗措置や日本と韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄などの「対日強硬カード」が支持率上昇につながっていないためだ。文氏側近のスキャンダルが拡大し、文政権は窮地に追い込まれている。
日本が「グループA(旧ホワイト国)」の対象国から韓国を除外する政令を施行した28日。韓国政界の最大の関心は日本ではなく、文氏側近の曺国(チョ・グク)前民情首席秘書官の娘の不正入学などの疑惑を調べるため、検察が27日に強制捜査したことだった。
「前例のない行為だ。党に戻って緊急対策を立てなければならない」。与党「共に民主党」の李海●(たまへんに贊)(イ・ヘチャン)代表は28日の会議で検察を激しく批判した。日本の措置に対抗して韓国の産業競争力を点検するのが会議の目的だったが、心ここにあらずだった。
曺氏のスキャンダルは文政権にダメージを与えている。世論調査会社リアルメーターが26日発表した世論調査では文政権の不支持率が50.4%と、初めて5割を上回った。韓国の保守勢力は文政権によるGSOMIA破棄も世論の関心を「反日」に向ける狙いがあったと疑う。
日本の植民地支配に対する痛みの記憶が残る韓国では「反日」は保守・革新を超えて結束し、政権を浮揚させる数少ない材料だった。だが、文政権では「反日カード」が効いていない。韓国政府は日本が輸出管理強化を発表した7月以降、対抗措置を相次ぎ繰り出してきたが、韓国ギャラップによると、支持率は7月第1週の49%から、8月第4週は45%に下がった。