2019年9月19日(木)

知財流出に厳格対応 米検察、グーグル元幹部起訴
新興企業には逆風も

AI
2019/8/28 11:26
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グーグル元幹部のレバンドウスキー被告(左)はグーグルから自動運転の技術を盗んだ疑いがもたれている

グーグル元幹部のレバンドウスキー被告(左)はグーグルから自動運転の技術を盗んだ疑いがもたれている

米連邦検察は27日、米グーグルの自動運転にからむ機密情報を盗んだ罪で同社の元幹部を起訴した。競合するウーバーテクノロジーズに技術を渡したとされる。米国では技術窃盗を巡る係争は多いが幹部起訴は異例だ。「知財は軽々に共有できない」という司法のメッセージは、人材の引き抜きで技術ノウハウを蓄積してきた新興企業への逆風にもなりそうだ。

起訴されたアンソニー・レバンドウスキー被告は自動運転の世界では名の知れたエンジニアだ。カリフォルニア大学在学中の2004年に自動運転バイクを開発し、07年にグーグルに入社。同社が09年に始めた自動運転プロジェクトの中心メンバーのひとりだった。

今回、直接問題視されたのはレバンドウスキー被告がグーグルとの守秘義務契約を無視して1万4000件もの自動運転にかかわる機密ファイルをダウンロードしたこと。だが、当局の狙いはイノベーションと脱法の線引きがあいまいな側面もあったシリコンバレーの文化に警鐘を鳴らすことにある。

この日、記者会見した米連邦捜査局(FBI)の幹部は「シリコンバレーは開拓時代の西部ではない。めまぐるしいスピードの競争は、無法地帯を意味しない」と述べた。検察も「人が会社を行き来することは自由だ。だが会社を去る時にポケットにモノをたくさん詰めることは許されない」との声明を出した。

実際、訴状には「無法地帯」をほうふつとさせる情景が描かれている。

16年1月に突然グーグルを辞めたレバンドウスキー被告は、その当時光センサーを使った「ライダー」と呼ばれる技術の統括をつとめていた。被告は、15年秋の時点でひそかに自動運転トラックの会社「オットー」を設立。この会社をウーバーが16年8月に買収した。

レバンドウスキー被告とウーバーの経営陣は、15年秋ごろからオットーの買収で話し合いを進めてたという。走行データを元に3次元の地図をつくったり、周囲の状況を把握したりするライダーは自動運転の中核技術だ。今回、検察はウーバーを起訴はしなかったが、競争の名の下にグレーゾーンに踏み込んだとの疑念を暗に投げかけている。

最後は検察の判断とはいえ、今回の起訴の発端は17年にグーグルがウーバーを民事で訴えたことにある。自動運転開発で先行するグーグルの知財への厳格姿勢は関係者にとっては激震となる。

スタンフォード大学で自動運転プロジェクトを率いていたコンサルタントのスヴェン・ベイカー氏は「この分野での知財の重みと機密性を知らしめた。今後、グーグルだけでなく知財の根底を持つ会社がライバルに強い態度を取ることがあり得る」と話す。

グーグルでの勤務経験があるシリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)投資家のひとりは「画像認識の人工知能(AI)判断などでスタートアップは知財への抵触を意識せざるを得なくなる」と話す。ある自動運転スタートアップの幹部は「人の引き抜きは日常的。意図せず大手と似たアルゴリズムになることもあり、悩ましい」と打ち明ける。

グーグルを含めて自動運転の本格的な商用サービスにまでこぎつけた会社はまだない。知財を巡る水面下の攻防が激しくなるなか、今度は当局が規律の確保に乗り出した。大手からスタートアップまで人とのつながりが強さの源泉だったシリコンバレー。その構図は少しずつ変わりつつある。

(シリコンバレー=中西豊紀、白石武志)

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