キヤノン、協働ロボ最大手と提携 「目」の技術競う

2019/8/27 22:35
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人間と同じ生産ラインに並ぶ協働ロボットの仕事の場が画像処理技術の向上で広がっている。キヤノンは27日、協働ロボ世界最大手のユニバーサルロボット(UR、デンマーク)と提携すると発表した。キヤノンの画像認識技術を活用し、ロボットが多様な作業をこなせるようにする。協働ロボは人手不足への対応や、生産ラインの見直しがしやすいことから需要が高まっている。ファナックなど産業用ロボ大手も対応を急いでいる。

キヤノンのカメラでとらえた情報をもとに、URのロボットが動く(27日、東京・大田)

キヤノンが監視カメラなどで培った画像処理システムを提供し、URが自社の協働ロボットと組み合わせて販売する。これまでロボットは腕の先端部に画像センサーを付けているだけのケースが多かったが、高精度の監視カメラでロボットの周辺の情報も総合的に判断できるようになる。

例えば、車のネジを締める工程では、カメラの画像からネジを締め忘れた箇所を認識し、作業し直すことができる。従来はネジ締めの場所ごとに複数のカメラを設置し、ロボットの制御プログラムを作る必要があった。

協働ロボは生産ラインで人の近くに設置できるように、安全性を考慮して作業スピードを落としている。安全柵の設置も不要で、一般的な産業用ロボットより狭いスペースに設置できる。生産ラインの変更が頻繁な工場で導入が進む。米調査会社インサイトパートナーズは協働ロボットの世界需要が2025年には19年の10倍の約9千億円になると予想する。

URは05年設立の新興メーカーで、18年の売上高は2億3400万ドル(約250億円)。協働ロボでは6割のシェアを持つ最大手で、累計で3万7千台以上を出荷した。

「ロボットに鳥のように周囲を見渡す目を搭載する」。キヤノンの枝窪弘雄・イメージソリューション事業本部副事業本部長はURとの取り組みをこう説明する。デジタルカメラなどで培った広い範囲から対象物を識別するなどの画像処理技術を生かす。

産業用ロボットはサーボモーターなどによる動作の正確さやスピードなど「手」の動きが競争軸の中心だったが、協働ロボットの存在感が高まることで「目」の性能がカギになっている。

産業用ロボの世界市場は年間1兆5千億円規模とみられ、日本メーカーが高い競争力を誇ってきた分野だ。協働ロボの市場拡大を受けて、大手のファナックや安川電機はスタートアップ企業と連携して画像処理技術を強化している。

ファナックは15年に資本業務提携した人工知能(AI)開発のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)と画像認識技術を開発し、年内にも新技術を搭載したロボットの出荷を始める。ナット締めや溶接の状態をAIで認識する。工場内の明るさに識別作業が左右される問題点があったが、新たな画像処理技術で解決する。

安川電機も17年にAI開発のスタートアップのクロスコンパス(東京・中央)と資本業務提携した。AIの活用をめざす子会社も設立し、クロスコンパスの社員と共同でAIを使った画像認識技術の向上をめざしている。生産した製品の良否判定を担う機能を開発し、顧客への提案を始めている。

日本の大手製造業でも資生堂が17年にメーキャップ用品工場の一部にラインに採用するなど協働ロボットの導入が進む。OKIも18年からATMの一部工程に導入した。

現状では人間のような素早い判断ができておらず「画像処理の速度の向上などが課題」(ロボット大手)との声もある。ただ、コンピューターの処理速度の向上は続く。キヤノンはあらゆるモノがネットにつながるIoT分野で独シーメンスに画像処理技術を提供するなどデジカメ以外の用途を強化しており、URにも自社からアプローチした。協働ロボットが新たな需要を作り出しつつある。

(福本裕貴、諸富聡)

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