AbemaTVをゼロから3年で大ヒットさせた36歳制作局長
U40の匠

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2019/8/29 6:00
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サイバーエージェントのインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマティーヴィー)」の人気が高まっている。記者会見のノーカット配信やオリジナル番組が話題を呼び、開局3年経った今も視聴者数は右肩上がりで拡大中だ。番組制作を統括する谷口達彦・制作局長に、新しいエンタメづくりに向けて仕掛けてきたことを振り返ってもらった。

「U40の匠」とは 各界で活躍する40歳未満(Under40)の若手社会人を「匠」(たくみ)と位置づけ、彼らが残してきた足跡に迫る連載企画です。

AbemaTVは2016年4月の開局以来順調に伸び、足元で1週間あたりの利用者数が1000万人を超す週が出るようになった。AbemaTVは広告収入、課金収入、周辺ビジネスを収益の柱に据える。1000万人はメディアとして一定の規模を得たことを意味する重要な数字だ。

AbemaTVのユーザーは順調に増加中(サイバーエージェントの決算説明資料より)

AbemaTVのユーザーは順調に増加中(サイバーエージェントの決算説明資料より)

谷口は開局時からAbemaの番組制作に関わる。めざすのはユーザーにAbemaの「視聴習慣」を根付かせること。家庭に置かれたテレビ受信機の場合には長年根付いた視聴習慣が存在するが、スマホやパソコンで番組を観るという習慣はまだ浸透していない。しかもスマホは映像を観る以外の用途にも使われるため、ライバルも多い。

谷口は、ユーザーに視聴習慣が浸透するためには「コンテンツとサービスの両輪を回すこと」が必要だと考えた。言い換えると「(1)魅力的な番組」と「(2)一過性のユーザーにならないための仕掛け」の2つを継続的に提供していくことだ。

「AbemaTVは番組が面白い」と思ってもらう仕掛けのひとつが緊急番組だ。2018年1月のコインチェックによる仮想通貨流出事件や、最近では南海キャンディーズの山里亮太さんと女優の蒼井優さんの結婚記者会見のノーカット放送などを配信。「Abemaに行けば『なにかやっている』」というイメージを植え付けた。

「記者会見の完全配信といえばアベマ」というイメージが定着しつつある(C)AbemaTV

「記者会見の完全配信といえばアベマ」というイメージが定着しつつある(C)AbemaTV

加えて心がけているのがネットに最適化した番組作りだ。ネットの最大の特徴はユーザー間の情報拡散力が速く、かつその影響力が強いこと。これを踏まえ、「見る前から面白いもの、なにか論争が巻き起こっても思わず感想を言えるものを意識し、番組に会話の種をまいておく」という。

8月8日から放送を始めたオリジナルドラマ「奪い愛、夏」も口コミを意識して企画した番組だ。きっかけは2017年にテレビ朝日で放送され、水野美紀さんの怪演が話題になった「奪い愛、冬」だ。これをAbemaTVで再放送したところ「一言申したい」人のコメントの輪がさらに広がった。「このドラマをネットの場に置けば、もっと作品や演出をパワーアップできるのではないか」。こう考え、水野さん主演で新作をつくることにした。

口コミから企画されたオリジナルドラマが「奪い愛、夏」だ(C)AbemaTV

口コミから企画されたオリジナルドラマが「奪い愛、夏」だ(C)AbemaTV

谷口の番組づくりの最大の特徴は、番組を企画してユーザーに届け、そのユーザーが反応するところまでをすべて一連のサービスとして連動させていることだ。「企画の中に面白さを内包させること。つまり、番組を企画するのではなく話題から企画をつくり、作ると届けるを分断させない」とそのコンセプトを語る。

社内では、「Abemaの勘所」「トンガってる」という言葉があるという。「コメントしたくなること」や「テンポ感」など、番組作りにあたっての基本的な考え方を指す。「気になって気になって仕方ない番組にするには、番組が完成する前からユーザーに届けることを意識しなければならない」

谷口のマイルールがこの3つだ。1つめの「熱狂」とは、「自分のやりたいことを見つけること」だと話す。谷口にとっては「AbemaTVをマスメディアにすること。新しい、世界に誇れる日本のニューメディアにすること」だという。これにこだわることで、仕事に迫力が出るそうだ。「これから何年かかるかわからないが、やりきりたい」。谷口の挑戦は続く。

【U40の匠 連載一覧】
(1) 音楽の楽しみ方を変えた男 大庭寛(ソニー)
(2) 観る前から面白いと言われる番組仕掛人 谷口達彦(AbemaTV)
(3) スタジアム満員請負人 原惇子(横浜DeNAベイスターズ)
(4) 日本人のエンタメ偏差値を上げた男 小林将(うんこミュージアム)
(5) 鋭意取材中

「U40の匠」探してます あなたの周りにおすすめの匠がいれば、取材班のTwitter(@nikkei_jisedai)まで情報をお寄せください。

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