特急ラピート、別編成の台車にも亀裂
運輸安全委が南海を調査

南海電鉄の特急「ラピート」の台車で長さ約14センチの亀裂が見つかった問題で、別の1編成の台車部分にも亀裂が見つかったことが27日、同社への取材で分かった。運輸安全委員会は、最初に見つかった台車の亀裂について事故につながりかねない重大インシデントに認定。鉄道事故調査官2人を派遣し同日、大阪市の南海電鉄本社で関係者の聞き取りなどの調査を始めた。
同社は、最初の亀裂が24日に見つかった時点で公表していなかった。広報担当者は「亀裂が部分的であったことなどを考慮し、安全面にすぐに影響することはないと判断した」と説明している。
一方、国土交通省には24日午後に報告したという。

同社によると、23日夕、大阪・難波から関西空港に向かって走行中のラピートの車両(6両編成)の連結部分から金属がこすれる音がしているのを車掌が確認。その後も約240キロにわたり運行を続けたという。途中で係員が目視で確認したが、異常は確認できず、上下線で計6本を運行した。
回送先の大阪市内の車庫で詳しく点検したところ、2号車の台車の中央にあるモーター付近で24日未明に長さ約14センチの亀裂が見つかった。車両は1994年4月に製造された。
同社は26日までにラピートの全6編成の車両について順次、緊急点検を実施。26日夜の点検では、別の1編成の車両の台車部分でも長さ10センチほどの亀裂があることが判明したという。先に亀裂が見つかった1編成とともに現在、運行を取りやめ、詳しい原因を調べている。異常のない残りの4編成は運行を続ける。
列車の台車に亀裂が見つかる問題は過去にも起きている。17年12月にはJR西日本の博多発東京行きの新幹線のぞみの台車に亀裂が確認された。博多駅を出発した直後から異臭や異音があったのに名古屋駅まで走行を続け、同駅で運休後に亀裂が見つかった。
亀裂はあと3センチで鋼材が破断する可能性があり、運輸安全委は事故につながる恐れがあったとして今回と同様、重大インシデントに認定。運輸安全委が19年3月に公表した調査報告書は、製造段階の不備が要因と結論づけたほか、運転を管理する指令員と保守担当者が、運行を続けるかどうかの判断を互いに相手に依存していたことも問題視された。
南海電鉄は、今回の台車はJR西で亀裂が起きた台車とは別のメーカーが製造したとしている。