「ボサノバの神様」の実像に迫るドキュメンタリー映画

文化往来
2019/8/31 6:00
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ブラジルの音楽家ジョアン・ジルベルトは「イパネマの娘」や「想いあふれて」などのヒットで知られ、7月に88歳で死去した。サンバのリズムをギターで表現しながらささやくように歌い、アントニオ・カルロス・ジョビンらとともにボサノバを生み出した。そんな「ボサノバの神様」は気むずかしい性格でも知られ、晩年は10年以上も公の場に出ることがなかった。

ジョアン本人に会うべく、監督はブラジルを旅する((C)Gachot Films/Ideale Audience/Neos Film 2018)

ジョアン本人に会うべく、監督はブラジルを旅する((C)Gachot Films/Ideale Audience/Neos Film 2018)

映画「ジョアン・ジルベルトを探して」(公開中)は、ブラジル音楽に魅了されたフランス生まれのジョルジュ・ガショ監督自身が、晩年のジョアンになんとか会うべく、ゆかりの場所や人たちを訪ねるドキュメンタリーだ。

すでに歌姫マリア・ベターニアなどブラジル音楽をテーマにした映画を発表していたガショ監督。今回はドイツ人ジャーナリスト、マーク・フィッシャー氏の著作に触れたのがきっかけという。「マークはとりつかれたようにジョアンを探し、そのてんまつを本に描いた。だが出版の直前、『世の中にはすべてを破壊する美がある』と記した遺書を残して自死したんだ」。マークの足跡をたどりつつ彼が果たせなかったジョアンとの面会を実現しようと、監督はブラジルを旅する。

「実はジョアンは冗談好きだった」と語るジョルジュ・ガショ監督

「実はジョアンは冗談好きだった」と語るジョルジュ・ガショ監督

取材の中でジョアンを知る人たちからマークと同じ結末を迎えるのではないかと心配されたという。実際、「かつてマークも訪ねたというジョアンが音楽を作り出したバスルームに、なぜか入りたくなかった。僕も自殺をしてしまうかもしれないと不安な気持ちに襲われたんだ」と振り返る。

ジョアンの妻だったミウシャなどの協力を得るものの、取材は難航。だがマネジャーからある情報がもたらされ……。「実はジョアンは冗談好きだった。競争の激しい音楽業界で尊敬されながら地位を築いたのも冗談好きという側面があったからこそではないか」。今回の映画を通して監督は実感したという。

(関原のり子)

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