FC東京一筋「僕がいる間に優勝」 橋本拳人(上)
今季の明治安田生命J1リーグで首位を走るFC東京を下支えしている。DFラインの前で危険なスペースを埋めて防波堤となり、時に激しく相手のキーマンをつぶす。かといって守備に特化した選手ではない。自分でボールを運ぶこともパスも出せる、オールラウンドなMFが橋本拳人だ。
8月24日の札幌戦までリーグ戦全24試合にフル出場中。チームでは橋本、GK林彰洋、CB森重真人の3人しかいない。「去年は途中でケガをして悔しい思いをした。今年はトレーニングと休養の質に気を配り、開幕からいい状態を保てている」。8月16日に26歳になった。選手としてまさに働き盛りという感じ。

昨季のFC東京は14勝8分け12敗、得点39、失点34の6位に終わった。今季は失点が減り(第24節終了時で18)、15勝のうち完封が9勝と堅守が際立つ。橋本は「長谷川(健太)監督の戦術が就任2年目で、よりチームに浸透したことが大きい」と語る。見えないロープで全員がつながれているかのような素早く的確なポジションの修正と球際の強さは、確かにJ屈指といえるものだろう。
悔しさもバネになっている。昨季も途中まで優勝を狙える位置にいたが、橋本がケガで戦列を離れた夏場以降に失速した。
「一つ歯車が狂うとガーと落ちていった。優勝はそんな簡単なものではないことを思い知らされた。それを踏まえ、今年はキャプテン(MFの東慶悟)を中心に一つ一つの練習に厳しく向かい合えている。その雰囲気の良さが試合につながっていると思う」
小学5年生でFC東京のスクール生になった。J2の熊本にレンタル移籍してプレーした1年半ほどの期間を除けば、FC東京一筋といえる存在。「トップチーム在籍年数は森重さんの次に長くなった」。それだけに、これまで通年では4位が最高のクラブに、J1初優勝の栄冠をもたらしたい気持ちは人一倍強い。
同じボランチの高萩洋次郎とは一緒にプレーして3年目。最終ラインでどっしり構える森重、機動力に優れた東も含めて「それぞれプレーの質は違うけれど、あうんの呼吸というか、お互いの良さをバランス良く出し合うようにやれている」という手応えもある。
「試合はまだ3分の1残っているけれど、1戦1戦を大事に戦って、みんなで乗り越えて、ファンやサポーターとともに優勝を喜び、笑い合いたい。小学生の時から応援してきたクラブのアカデミー出身者として、僕がいるときに初優勝できたら、たぶん一生の誇りになると思うので」=敬称略
(武智幸徳)