2019年9月18日(水)

米中対立、中銀揺らす FRB、新たな緩和模索

2019/8/26 1:24
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【ジャクソンホール(米ワイオミング州)=後藤達也】米中対立の激化が中央銀行を揺らす構図が浮き彫りとなっている。低成長・低インフレという課題を抱える中で、貿易摩擦という新たなリスクが膨らむ。金融緩和余地も乏しく、悩みを吐露する中銀首脳が増えてきた。米連邦準備理事会(FRB)は新たな緩和手法も模索するが、手詰まり感が強まっている。

会場近くで話すパウエル議長(右)とカーニー総裁(23日、米ジャクソンホール)

22~24日、米ワイオミング州の避暑地、ジャクソンホールに中銀幹部や学者が集い、毎夏恒例の国際会議を開いた。今年のテーマは「金融政策の課題」で、米中対立が最大の論点となった。

パウエルFRB議長は貿易戦争を「新種の課題だ」とし、「政策対応の見本となる先例がない」と述べた。英イングランド銀行のカーニー総裁は「金融政策は大きなショックをなだらかにするよう手助けすることしかできない」と金融緩和の限界を語った。

中銀トップが苦悩を隠さないのは金融緩和の余地が乏しいためだ。FRBの政策金利は2%ほどで利下げ余地が乏しい。欧州中央銀行(ECB)や日銀はすでにゼロ%からマイナスだ。「緩和余地が乏しく、負のショックを相殺できない懸念がある」(カーニー氏)中で米中対立が直撃した。

FRBはすでに新たな政策手法の検討に着手している。一つは物価目標の柔軟化だ。2%インフレを景気後退期と回復期の平均で実現する案がある。回復期には物価上昇率が2%を上回っても緩和的な政策を続けられるようになる。

もう一つは金利の誘導を短期金利だけでなく、長期金利にも広げることだ。長期金利を直接押し下げることで、社債や住宅ローンへ金利低下を波及しやすくする。日銀が3年前に導入した手法で、FRBは日銀の政策の効果と副作用を綿密に研究している。

ただ、こうした手法が起爆剤になるかは不透明だ。世界経済は過去10~20年で潜在成長率が鈍り、景気を熱しも冷ましもしない中立金利も低下した。そもそも金利を通じて景気を刺激することが難しくなっている。パウエル議長はこの状況を「ニューノーマル(新たな常態)」と呼び、長期的な難題と位置づける。

会議では、米金融政策を起点に、国境をまたいだ巨額の資本フローが新興国経済の景気振幅を乱している点も議論した。ドルの影響力が増す中で、過度な緩和を追い求めると、世界的な金融不均衡を招く恐れもある。

財政活用論も勢いを増す。サマーズ元米財務長官は「新たな金融緩和策を発明することは全く不要で、財政などを通じ需要を創出せねばならない」と指摘する。金融緩和で金利が抑えられている現状は財政拡張のハードルが低い。日銀の黒田東彦総裁は「結果的に財政と金融政策の協調になりうる」と6月に述べていた。

だが、財政だけで問題が解決するわけではない。国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト、ギタ・ゴピナス氏は財政活用を訴えつつも「高齢化や生産性鈍化といった構造問題には対応できない」と指摘する。政府債務の膨張も新たな問題を生む。世界経済は課題山積のまま局面の変化に差し掛かる。

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