2019年9月15日(日)

米中経済の分断に拍車 関税合戦、税率にシフト

貿易摩擦
2019/8/24 23:00
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【ワシントン=河浪武史、北京=原田逸策】米中貿易戦争の報復の連鎖が止まらない。米中両国政府は23日、相手国の追加関税に対する報復措置を発表。制裁関税の対象はほぼすべての輸入品に広がり、報復手段は関税率の引き上げに移ってきた。中国は人民元安で関税の影響を相殺するのが難しくなり、米中にまたがる供給網の分断が加速するのは確実だ。

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先に動いたのは中国だった。米株式市場が開く直前の23日夜、中国国務院(政府)は9月と12月の2回に分け、5078品目、750億ドル(約8兆円)分の米国製品に5%か10%の追加関税をかけると公表した。米国が同時期に発動する対中制裁関税「第4弾」への報復措置で、米農家の関心が高い大豆は追加関税率が現行の25%から9月に30%に上がる。

中国の発表に激怒したトランプ米大統領はツイッターに「我々に中国は必要ない」と投稿。米通商代表部(USTR)は第1~3弾の税率を25%から30%、第4弾の税率を当初予定の10%から15%にそれぞれ引き上げると即日発表した。

米国が関税率を引き上げるのは、中国が元安を容認し輸出企業を下支えするのを封じる狙いが見え隠れする。トランプ氏が第4弾発動を表明した1日以降、元の基準値は約2.5%下落した。5%の関税率引き上げで元安効果は帳消しできる。

中国からの生産拠点移転を加速させる思惑も透ける。トランプ氏はツイッターに「米国企業には中国からの生産移管を命じる」と異例の投稿をした。貿易戦争の長期化で米アップルなど多国籍企業は供給網の見直しを本格化しているが、関税率の引き上げはこうした動きを加速させる可能性がある。中でも第1~3弾は中国以外からも調達できる品目が多く、米国企業の調達シフトを後押しする公算が大きい。

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の「休戦」合意は風前の灯(ともしび)に=ロイター

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の「休戦」合意は風前の灯(ともしび)に=ロイター

一方、関税率引き上げは制裁関税の対象に追加できる品目がほぼなくなったことの裏返しでもある。米国が対象から外しているのは中国以外で調達が難しい希土類(レアアース)、命に関わる子ども用安全シートや医薬品に限られる。

中国の報復措置も原油や大麦など初めて追加関税を課す商品は少なく、多くの品目は2度目の課税だ。中国は米国からの全輸入額の7割にあたる1100億ドル分に関税を上乗せ済みで、残りは大型飛行機や半導体など自国産業に悪影響が及ぶ品目しかないためだ。

追い込まれた中国が対抗措置として一段の元安誘導に踏み切れば、通貨安競争が加速するとの懸念から世界の金融市場に動揺が広がりかねない。中国が報復措置を発表した直後、本土外(オフショア)市場で人民元相場は急落した。

米中は9月に閣僚級の貿易協議を予定していたが「キャンセルもありうる」(トランプ氏)。米中対立の激化に歯止めがかかる兆しは見えず、世界経済は新たな減速リスクを抱え込んだ。

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