2019年9月17日(火)

清水寺本堂 檜皮葺の改修「古文書通りに」試行錯誤
匠と巧

関西タイムライン
コラム(地域)
2019/8/26 7:01
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口に含んだ竹製の和くぎを手際よく取り出し、ヒノキの皮に打ち付けていく――。日本を代表する寺院、清水寺(京都市)で進む半世紀に1度の大修理は、正念場を迎えている。「清水の舞台」として知られる本堂の檜皮葺(ひわだぶき)の葺(ふ)き替え。江戸時代の古文書の記述に基づき、1600年代に再建された当時とみられる手法に近づけた。

檜皮葺職人と瓦職人が協力し、清水寺本堂の屋根に鬼瓦を据え付ける=松浦弘昌撮影

檜皮葺職人と瓦職人が協力し、清水寺本堂の屋根に鬼瓦を据え付ける=松浦弘昌撮影

容赦ない夏の日差しが照りつける京都。参拝客でにぎわう舞台とは対照的に、丸太の足場で覆われた屋根では黙々と作業する職人の姿があった。作業するのは本堂の正面左手に位置する「翼廊(よくろう)」。棟の端に据え付ける鬼瓦は本堂が再建された約380年前から使われるものだ。瓦と檜皮の間に隙間が生じないよう丁寧に据え付けていく。屋根の葺き替えでも最終段階の作業だ。

檜皮葺とはヒノキの樹皮でふいた屋根のこと。出雲大社本殿(島根県出雲市)や北野天満宮(京都市)でも使われる屋根ふきの手法で、8世紀の中ごろから用いられる。ヒノキの樹皮を採取する「原皮師(もとかわし)」と呼ばれる職人が、樹齢80年以上の木々にのぼり、10年周期で皮を採取。この皮を檜皮葺職人が加工し、屋根に並べて重ね、和くぎで固定する。

瓦で屋根をふく手法に比べて、「照(て)り起(むく)り」と呼ばれる柔らかい曲線がでるのが特長で、多くの歴史的な建造物でも使われる。

清水寺が創建されたのは8世紀末。本堂は今日まで、9回の火災にあい、現存する本堂は寛永10年(1633年)に徳川家光によって再建された。

「平成の大修理」は2008年に始まり、国宝に指定されている本堂のほか、8棟の重要文化財が対象だ。17年1月から始まった清水寺本堂の屋根葺き替えは1967年以来、約50年ぶり。「一番の大仕事」とされ、檜皮葺の修理に約10億円が充てられる。西日本を中心に約100トンの檜皮を仕入れ、10人以上の檜皮葺職人が約2年をかけて葺き替えに臨んでいる。

「これまでのやり方が通用しない」。檜皮葺職人の西村信生さんはこう語る。今回の檜皮葺は半世紀前とは大きく異なるものになった。寛保元年(1741年)にまとめられた古文書を確認したところ、檜皮葺に関する新たな記述を発見。江戸時代に使った檜皮の寸法などが記されており、「できる限り当時の技術に復することにした」(京都府教育庁文化財保護課の島田豊主査)。

当時使っていた長さ96センチ、横15センチ、厚さ2.1ミリの檜皮は、今日の一般的な檜皮より長くて厚い。清水寺の前回の修理で使ったサイズとも異なる。職人が経験則に沿って重ねていってもなかなかイメージ通りにはいかず「曲線をうまく出せるように、何回も檜皮を剥がした」(西村さん)。

葺き替えが完了するのは2020年3月の予定。約380年前の優美な曲線を携えて、再び登場する日も近い。

(赤間建哉)

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