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日本代表「2枠」階級、争い激烈 世界柔道25日開幕

Tokyo2020
2019/8/24 5:30
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柔道の世界選手権が25日、東京・日本武道館で開幕する。東京五輪の選考レースでも大きな意味を持つ登竜門。なかでも同じ階級に日本選手が2人名を連ねる男女4階級はただ1枚の五輪切符を巡り、ライバルとの激烈な争いが待っている。

研究されて苦しむ阿部一二三

2人の日本選手で甲乙つけがたい状況になったのが男子66キロ級。昨年まで世界選手権を2連覇し、五輪代表争いも独走するかに思われた阿部一二三(日体大)にブレーキがかかっている。昨年11月のグランドスラム(GS)大阪、今年4月の全日本選抜体重別選手権と決勝で丸山城志郎(ミキハウス)に連敗。2月のGSパリでは18年の世界ジュニアを制したイタリア選手に初戦負けを喫するなどこの1年優勝から遠ざかっている。

優勝から遠ざかっている阿部一二三にとっては正念場の大会になる=共同

優勝から遠ざかっている阿部一二三にとっては正念場の大会になる=共同

早くしてトップに出た者の宿命か、徹底的に研究され、代名詞の背負い投げや袖釣り込み腰を封じられている。昨年世界選手権準決勝でも実力者の安バウル(韓国)に絞られた袖を落とされて、頭が下がって苦戦を強いられた。この時は勝負強く接戦を制したものの、ぴんと立って担ぎ技に入る理想の姿勢を作らせまいと対策を練ってくる相手に苦しむ試合が続いている。

もちろん、阿部一も手をこまねいてはいない。厳しいマークをかいくぐるために取り組んでいるのが足技を散らし、相手を崩して担ぎ技をうかがう戦いだ。さらに組み手で優位に立って、技を存分に放てる体勢に持ち込めるかが復権のカギ。選抜体重別で左脇腹、6月には左足首と相次ぐけがにも悩まされているが、「自分自身を作り上げて警戒してくる相手も投げきるだけ」と自信は揺らいではいない。

日本刀のような技のキレ、丸山

阿部一を抑え第1代表で大会を迎える丸山は、同じ天理大卒で練習をともにする大野将平(旭化成)が「天才的」と評する柔道センスが花開いてきた。内股を軸にした技のキレは天理大の穴井隆将監督いわく「日本刀」のごとし。選抜体重別で右手首を骨折、脱臼したが、実戦から離れる間も消耗戦になっても技の威力を落とさぬようにと、瞬発力や走り込みでフィジカルを強化してきた。充実一途の現状にも「全く満足はない。まだまだ甘いところがあるし、あくまで目標は世界選手権と東京五輪」。阿部一より4つ上の遅咲きの柔道家が"新旧交代"を印象づける大会になるか。

男子66キロ級の丸山城志郎(左)は充実一途。ライバルの阿部一二三から王座の奪取を狙う=共同

男子66キロ級の丸山城志郎(左)は充実一途。ライバルの阿部一二三から王座の奪取を狙う=共同

女子最重量の78キロ超級も構図は複雑だ。2年連続全日本女王の素根輝(環太平洋大)は昨年世界女王の朝比奈沙羅(パーク24)に直接対決で5連勝と無類の強さを誇る。それでも現状で抜けた1番手と言い切れないのは国際大会の実績で見劣るからだ。大きな相手と組むと上から覆いかぶせられる格好になる小柄な体。罰則を早めに与えてスピーディーな試合を志向する国際大会になると、形勢不利と見なされて指導を先に出されがちだ。本人も重々承知で「組み手をしっかりして先手、先手で仕掛ける」と対策を練ってきた。

昨年12月のマスターズ広州大会や今年7月のグランプリ(GP)ザグレブを制し、徐々にピースも埋めてきた19歳。今大会は内弁慶からの脱却を証明するまたとない機会にもなる。一方の朝比奈も海外勢にひけを取らない体格を武器に、払い腰や支え釣り込み足と技出しも早かった昨年大会を再現できれば連覇の可能性も十分だ。どちらが「世界で勝てる器」か、その結果が五輪切符も大きく占うことになる。

女王らしい試合運びも身につける阿部詩

女子52キロ級は阿部一の妹、詩(日体大)が連覇を果たせば、女子最激戦区といわれてきた階級で大きく抜け出すことになる。今年に入り発症した左肩痛も、復帰戦の5月のGPフフホトで優勝し不安を一蹴。袖釣り込み腰など兄同様の立ち技の破壊力に加え、最近は寝技にも進境を見せ、女王らしい試合運びも身につけつつある。

対抗馬の志々目愛(了徳寺大職)はリオデジャネイロ五輪金メダルのマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)を破って17年に1度は世界女王の座についた。昨年世界選手権、GS大阪で阿部詩に連敗したものの、チャレンジャーの立場で臨む今年は心理面でも違うだろう。5月に負傷した右脚の回復がカギでも、開き直って挑めれば、内股を中心とした一瞬の決め手は阿部詩に負けていない。

女子52キロ級の阿部詩(右)は連覇を果たせば激戦の五輪代表レースから抜け出す=共同

女子52キロ級の阿部詩(右)は連覇を果たせば激戦の五輪代表レースから抜け出す=共同

男子60キロ級は世界選手権2連覇中の高藤直寿(パーク24)が東海大の後輩でもある永山竜樹(了徳寺大職)を今年も迎え撃つ。昨年は準決勝で対戦し、一瞬の隙をついた小内刈りで高藤に軍配。それでも永山がしっかりと実績を積み上げ、再び挑戦権を得た。高藤にとっては面白いはずもなく「いつも通りの柔道をして『60キロ級は高藤でしょ』と言われるようにしたい」。天衣無縫の柔道から「負けない柔道」へ脱皮を図り、円熟味を増している高藤と、小柄ながら背負い投げに力のある永山。実力面からも再戦は必至の状況だ。

いずれの階級も過去に互いに何度も手合わせし、手の内を知る同士。どちらが隙を突けるか、ぎりぎりの戦いになるのは間違いない。

(西堀卓司)

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