2019年9月18日(水)

7月利下げ決断、割れたFRB 9月追加緩和も視野

トランプ政権
貿易摩擦
2019/8/22 19:30
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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)が21日公表した7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、利下げを巡って意見が割れていたことが明らかになった。同会合では10年半ぶりの利下げを決め、政策金利を0.25%下げたが、複数の参加者が0.5%の大幅利下げを要求、数人が据え置きを求めていた。政権や市場からの追加緩和圧力が高まる中、FRBは9月の追加利下げの是非の検討に入るが、パウエル議長は難しいかじ取りを迫られる。

FRBのパウエル議長=ロイター

FRBのパウエル議長は23日、ワイオミング州で開く毎年恒例の国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演する。市場は既にほぼ100%の確率で、9月中旬の次回FOMCで追加利下げに踏み切ると予測しており、パウエル氏がどこまで利下げ時期に言及するかが焦点だ。

議事要旨によると7月30~31日のFOMCでは、複数の参加者が物価上昇目標の早期実現のため、0.5%の利下げを主張した。一方、数人は経済が好調なのに緩和すれば金融にリスクが生じると利下げに反対。FOMC参加者の緩和姿勢が大きく割れていることが浮き彫りになった。

議事要旨は貿易戦争などで米景気に減速懸念が浮かんでいると指摘して「景気リスクの性質からみて、政策当局者は柔軟さを保つことが求められる」と主張。中国などとの関税合戦は「景気を下押し続ける」とも分析し、9月中旬の次回会合での利下げを視野に入れる考えを示唆した。

ただ利下げについて「会合参加者の大半は、政策のサイクル半ばでの調整とみている」とも指摘し、本格的な利下げ局面に突入するとの見方は否定してみせた。政策変更の直前に明記する定番文句の「金融緩和が近く正当化される」との表現も盛り込まず、9月中旬の会合での追加利下げを明示するのは避けた。

もっとも、米景気の先行きは不透明感が一段と強まっている。トランプ大統領は中国との貿易戦争で同国製品に追加関税を課す「制裁第4弾」を発動すると表明した。米ミシガン大が調査した8月の消費者態度指数は92.1と前月比6.3ポイントも急落し、堅調な家計も貿易戦争のあおりで先行き不安を強め始めた。

金融市場もFRBに追加緩和の圧力をかける。8月中旬には米10年債と米2年債の長短金利が逆転する「逆イールド」に12年ぶりに陥った。景気後退の予兆とされ、ダウ工業株30種平均は14日に前日比800ドルも下落。サマーズ元財務長官は「09年以来で最も危険な瞬間だ」と指摘した。

そのため、先物市場は9月中旬の次回FOMCで利下げに踏み切る確率をほぼ「100%」と見込んでいる。債券市場でみられた10年債と2年債の「逆イールド」はすぐに解消されたが、追加利下げを完全に織り込んだことが理由のひとつだ。

20年の再選を最重要視するトランプ大統領も、連日のようにFRBに利下げを要求する。19日には「短期間に少なくとも1%の利下げが必要だ」と主張。中国との貿易戦争をトランプ氏にけしかけたナバロ大統領補佐官(通商担当)は、9月の会合を待たずに8月中に緊急会合を開いて利下げするよう要求した。

FRB自体は先行きのリスクを読み切れていない。「米経済の先行き不安は金融政策ではなく貿易政策の問題」(FRB高官)で、利下げで景気減速の懸念を解消できるわけでもない。

7月会合で利下げに反対したボストン連銀のローゼングレン総裁は「金融の安定を重視すべきだ」と話す。過度な利下げは、企業や個人の過大債務につながって景気後退時のショックがかえって大きくなる。

米景気は拡大局面が過去最長の11年目に突入し、失業率も49年ぶりの水準まで一時低下した。FRB内には本格的な景気後退期に利下げの「のりしろ」を残しておきたいとの思いもある。政権と市場の止めどない要求に、FRBが応えきれる余地は徐々に狭まっている。

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