ファンドラップ運用を高度化・竹崎氏(投信観測所)
金融機関が個人顧客と投資一任契約を交わし、顧客に代わって投資信託で資産運用するファンドラップ。最近は大手証券やメガバンクグループだけでなく、地方の金融機関でも取り扱いが増えてきた。なかでも好成績を上げて話題になっているのが、昨年から取り扱いを始めた山陰合同銀行とごうぎん証券だ。両社のファンドラップの運用を担当するのは、野村グループのファンドラップ専門の資産運用会社であるウエルス・スクエア。詳しい運用手法などについて、同社の竹崎竜二取締役CIO兼運用部長に話を聞いた。

運用効率に着目、資産配分を最適化
――好成績を収めている要因は。
「各資産クラスを最適な資産配分で組み入れるノウハウがある点だ。ポートフォリオの運用効率を測るシャープレシオに着目し、それをいかに高めていくか。投資信託の開発や運用に長年携わってきた経験を生かしつつ、少ないリスク(値動きの振れ幅)でより高いリターンを上げる効率の良い資産配分を目指して運用している」
「もうひとつは、様々なリターン特性を持つファンドをそろえたこと。特に『為替ヘッジ型』と『スマートベータ型』の品ぞろえにこだわった。この2つの要因でシャープレシオの向上が期待できる」

――それらのファンドを選んだ理由を教えてください。
「為替ヘッジ型のファンドを入れたのは、為替リスクを抑えながら、海外の株式・債券・REIT(不動産投資信託)の相対的に高いリターンを獲得するのが狙いだ。他のファンドラップでは為替ヘッジ型を多く含むケースは少ない。分析してみると、為替ヘッジしたアセットクラスを入れたポートフォリオは、伝統的な4資産だけで構成したポートフォリオに比べ、より高い有効フロンティア(最も効率的に運用できる資産配分をつなぎ合わせた曲線)を作れることがわかった」
「その有効フロンティアは、一般的に為替ヘッジなしの多資産で構成した場合に比べても膨らむ。特に『低リスクから中リスク・中リターン』のポートフォリオで高い効果を発揮する。昨年春に運用を開始した債券中心のリスクの低いコースでは、海外資産に投資しているにも関わらず、国内債券で運用するファンドよりもリスクが低く、シャープレシオが高くなっている」
「スマートベータは『賢い指数』とも呼ばれ、自己資本利益率(ROE)などの財務指標や配当など特定の基準で選定した銘柄で構成される指数のこと。スマートベータ型は単にリターンが高いだけではなく、リスクが小さい傾向にある。例えばスマートベータ型の『野村日本株式最小分散ポートフォリオマザーファンド』の銘柄選定には、『リスクが小さい銘柄群は長期的に市場を超えたリターンを生む』という分析に基づいた手法が使われている」
パフォーマンスの向上に集中
――その他の特徴や、運用で大切にしていることは。
「他社のファンドラップには、同じコースでも特定の資産を含めるかどうかや為替ヘッジ有無などを顧客の選択肢として用意している場合がある。当社では先物取引などを利用したオルタナティブ(代替)資産の有無のみを選べるようにし、それ以外は運用者に任せてもらう設計としている。その分、高いパフォーマンスを上げることに集中し、シャープレシオをさらに高められる運用を目指している」
「投資顧問業者は契約した顧客に投資判断を一任される立場にある。任せてくれた投資家のために毎朝リバランス(保有比率の調整)が必要かチェックして、各口座が適切なポートフォリオになるよう管理している。競合他社と勝ち負けを競っているわけではない。大切なのは投資家にとって最適なポートフォリオを提供し、いかに成功体験を積んでもらうかだ」
(QUICK資産運用研究所 望月瑞希)