ソニー、自社施設で太陽光の電力融通

ソニーは21日、離れた自社施設の間で太陽光からつくった電力を融通すると発表した。2020年2月に始める。電力小売りを通さないため、環境負荷の小さい再生可能エネルギーを安価に使える。国内では再生エネ導入量は減少傾向にあるが、ソニーのように社内で大規模に融通する動きが広がれば、再び活性化する可能性がある。
静岡県内にあるソニー・ミュージックソリューションズの倉庫の屋根に京セラ製の太陽光パネルを約1700キロワット分設置し、倉庫で使い切れなかった余剰電力を県内の同社工場に融通する。中部電力の送配電網を使うが、小売事業者を介さない「自己託送」と呼ばれる契約を使う。パネルの価格が下落しており、電力会社から再生エネを購入するより価格を抑えられるもようだ。
設備導入で倉庫の約半分、工場の5%程度の消費電力をまかなう見通し。年間で二酸化炭素(CO2)約1千トンの削減効果がある。
ソニーは18年に再生エネで消費電力を賄う国際的な企業連合「RE100」に加盟し、現在5%の再生エネ比率を40年度までに100%に引き上げる目標を掲げており、目標達成に弾みをつける。将来は発電専用の太陽光施設から再生エネを調達することを視野に入れる。
これまで太陽光は再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)を使って大手電力に売るのが一般的だった。自己託送では前日に発電計画を報告し、実際の発電量と誤差があると追加費用が発生する仕組みがあり、天候の影響を受ける太陽光発電では小規模施設の利用にとどまっている。
ソニーは気象予報から発電量を高精度に予測する東京電力エナジーパートナーのシステムを利用する。計画の誤差が小さくなり、大規模施設でも自己託送を利用できるようになった。
企業が電力小売りに頼らず、自ら再生エネを調達する動きは世界で広がっている。アップルやグーグルなど米IT(情報技術)大手は自社施設に太陽光パネルを設置するほか、風力発電施設などから再生エネを直接調達している。
これまで国内ではFIT価格の低下に伴い再生エネの導入量は減少傾向が続く。企業が自ら調達する動きが広がれば、再生エネ投資が再び拡大する可能性がある。