Facebook、縛られる「狙う広告」 規制当局に配慮

【シリコンバレー=中西豊紀】米フェイスブックは20日、外部のウェブサイトなどが集めた個人情報を同社が共有しないようユーザーが設定できる新機能を導入すると発表した。ネット広告の精度が落ちるため業績にはマイナスだが、当局による規制強化の動きもあり、プライバシーの保護を優先する。2018年春に起きた大規模な情報流出問題は同社のビジネスモデルの根幹を変えつつある。
新機能は「オフ・フェイスブック」の名称で、ユーザーが自分の個人情報をターゲティング広告に利用できないようにできる。アイルランド、スペイン、韓国を手始めに順次対象地域を他国にも広げていく。
フェイスブックは協業関係にある第三者のウェブサイトやアプリを通じてユーザーの行動データを集めている。ユーザーにとって最適な広告材料を探るのが目的で、ユーザーがウェブで衣料品を検索した後にフェイスブックにログインすると同じ衣料品の広告が出たりするのはそのためだ。
ただ、ユーザーはどの事業者がどういった個人情報を集めてフェイスブックと共有しているかは分からない。18年3月に英コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカを通じた情報流出が発覚した際にはこのデータ収集手法にも批判が集中。同社のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は同年5月に対応を約束していた。
新サービスではどのサイトやアプリが自分のデータを集めたのかを知ることができる。その上で、集めたデータと個人のひもづけを解くように設定することが可能になる。データそのものは消えないが、フェイスブックは第三者から集めたデータをターゲティング広告に使えなくなる。
フェイスブックは今回の措置が「事業に影響を及ぼす」とする一方で「ユーザーがデータをコントロールできることの方がより重要だ」としている。
米調査会社、イーマーケターのアナリスト、ジャスミン・エンバーグ氏は「規制対応も念頭に置いている」と分析する。欧州に加えて米国でも2020年以降にカリフォルニア州などを中心にプライバシー規制が強化される方向で、こうした動きに対応する狙いもあると見られる。
ケンブリッジ・アナリティカの問題が発覚して以降、フェイスブックはプライバシー問題への対応に追われてきた。3月には投稿の共有よりも「メッセンジャー」など対話アプリを軸にした情報共有サービスを目指すとCEOが表明。平行して不正コンテンツを監視する人員を2万人規模にまで増員した。
ネット広告の世界では当たり前だったデータの共有から一定の距離を置く今回の機能は、関係企業に幅広く影響を与えそう。フェイスブック問題は同社だけでなく、同社とともにデータで稼いできた広告経済圏そのものにビジネスモデルの変革を迫りはじめている。

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