中国、「利下げ」小幅に 景気下支え限定的
新指標金利4.25%、下げ幅0.1%

2019/8/20 18:42
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【北京=原田逸策】中国人民銀行(中央銀行)が20日に銀行貸し出しの新たな指標金利を初めて公表した。今後は政策金利である貸出基準金利ではなく、新金利をもとに銀行が企業向けの融資金利を決めるようになる。新金利は1年物で4.25%と基準金利より0.1%下がった。実質的な「利下げ」といえるが、下げ幅は小さく、景気下支え効果は限られそうだ。

中国人民銀行(中央銀行)は銀行貸し出しの新たな指標金利を初めて公表した

公表したのは最優遇貸出金利(プライムレート、LPR)。優良企業向けに適用する金利で、2013年から公表しているLPRを衣替えした。

貸出金利の指標としては国務院(政府)が決める基準金利が強い影響力を持つ。政府が恣意的に決められる基準金利は市場動向を反映せず、15年10月から4.35%で据え置きが続く。

今年は短期金融市場の金利や債券利回りは下がったのに、6月の貸出金利は昨年12月より上昇した。人民銀の劉国強副総裁は20日の記者会見で「銀行が基準金利を参考に融資するので、市場金利低下の恩恵が実体経済に伝わるのを阻んでいる」と指摘した。

そこで人民銀は市場動向を映す新たなLPRの公表を始めた。大手行、地銀、外銀など18行の報告値を平均して算出するが、基準金利を参考にすることを禁じた。

代わりに人民銀が金融調節で大手銀行に短期資金を融通する「中期貸出ファシリティー(MLF)」の金利(3.3%)に、各行の資金調達コストなどを加味した値を報告させた。MLF金利は短期金融市場の実勢金利と比較的近いとされる。

今後、銀行の融資現場では基準金利に代わり、LPRの存在感が高まりそうだ。人民銀がLPRをもとに融資金利を設定するよう銀行に求めるからだ。大手国有企業ならばLPRそのもので、中小企業ならそこに焦げつきリスクを上乗せした金利で融資されそうだ。

LPR公表には、貸出金利の低下を誘導する景気対策の狙いがある。LPRは基準金利を下回り、3年10カ月ぶりの「利下げ」ともいえる。

「大幅利下げ」を予想する見方もあったが、下げ幅はわずか0.1%にとどまった。しかもLPRは満期を迎えた貸し出しから順次適用するので、金利下げが浸透するのに時間がかかる。基準金利の下げであれば毎月の利払いですぐ反映される。今回の「利下げ」の景気押し上げ効果は限られそうで、みずほ総合研究所の三浦祐介主任研究員は「人民銀は今後、LPRのもとになるMLF金利を下げるのではないか」とみる。

大幅利下げに踏み切れない背景には、消費者物価の上昇懸念や人民元安の圧力にくわえ、くすぶる銀行の経営不安がありそうだ。

人民銀の孫国峰貨幣政策局長は「新LPRで利ざやが縮小し、利益に影響がある」と認めた。米格付け会社ムーディーズも19日のリポートで「貸出利ざやの縮小で一部の銀行が高リスクの債券運用に走る」と警鐘を鳴らした。

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