2019年9月17日(火)

香港、中国当局とデモ隊が情報戦 SNSで世論操作

2019/8/20 21:11
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香港で続く大規模デモをめぐり、米フェイスブックとツイッターは19日、900件を超える不正アカウントが中国政府による情報操作に使われていたと公表した。中国を名指しした摘発は今回が初めてとみられ、ロシアによる2016年米大統領選への介入で注目されたSNS(交流サイト)による世論誘導が世界に拡散した形だ。デモ参加者もSNSを世論づくりに活用するなど情報戦の様相を呈しており、情報共有の手段だったはずのSNSが逆に分断を深める結果を招いている。

香港のデモ隊と中東の過激派「イスラム国」の写真を並べて「違いは何だ?」と訴える

香港のデモ隊と中東の過激派「イスラム国」の写真を並べて「違いは何だ?」と訴える

「違いは何だ?」。8日にフェイスブックに投稿された画像は、香港のデモ隊と中東の過激派組織「イスラム国」(IS)の写真が並び、両者をテロリストとして同一視するような内容だった。

ツイッターは19日、こうした中国政府の関与が疑われる936件の不正アカウントを公表した。その多くが香港の「逃亡犯条例」改正案へのデモを標的にする内容だ。

ニュースサイトを装い、警察がデモ隊を1日以内に逮捕すると伝え、警察への支持を呼びかける

ニュースサイトを装い、警察がデモ隊を1日以内に逮捕すると伝え、警察への支持を呼びかける

このほか約20万件の不正アカウントの作成が試みられ、利用前に凍結したという。同社は中国政府が関与した具体的な根拠は示さなかったが、19日の声明で「国家の支援を受けた組織的な工作であることを裏付ける証拠がある」と強調した。フェイスブックも19日、中国政府の関与が疑われる不正アカウントなど15件を削除したと発表した。

デモを取り締まる警察を称賛する中国国営新華社の動画ニュースを、ツイッターが広告として掲載していたことも発覚した。批判を受けてツイッターは19日、今後は国営メディアの広告掲載をやめると発表した。

中国外務省の耿爽副報道局長は20日の記者会見で「中国のメディアが海外のSNSを使って中国の政策を紹介するのはまさに理にかなっている」と述べ、ツイッターなどが「どうして強烈な反応をするのか私にもわからない」と不満を示した。

中国でネット対策を担う部隊は「五毛党」などと呼ばれる。香港のデモ隊が立法会(議会)を占拠し、共産党系メディアの記者を攻撃した後、SNSには五毛党が関与したとみられる大量の批判コメントがあふれた。米国のSNSは中国本土ではブロックされ使えないが、工作部隊は中国政府寄りのコメントを書き込むことで外国世論の誘導を狙ったとみられる。

もともと中国は国内で厳しい情報統制を敷く。短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」では「香港加油(がんばれ)」などの投稿の閲覧を制限する一方、民主派を批判する記事を大量に載せる。

一方、デモ隊側もSNSを活用する。特定のリーダーがいないネット発の運動では、SNSは情報共有や宣伝の重要なツールだ。当局の監視が及ばないiPhone同士の画像送信機能「AirDrop(エアドロップ)」を使い、警察がデモ隊に暴力をふるう様子などを拡散し、反警察の世論づくりを図る。

デモに参加した女性が警察の攻撃で失明したとの情報がSNSで広がったことで、香港国際空港での大規模デモにつながった。若者の間ではSNSのやりとりを中国本土の人々にわかりにくくするため、方言である広東語の発音記号を使う投稿も流行している。

「我々のサービス上に隠れた情報操作行為の居場所はない」。ツイッターは19日の声明で強調した。同社やフェイスブックは16年米大統領選でロシアによる選挙介入を許したとして米議会などから批判を浴び、規制強化や会社分割論などが議論される一因となった。

中国を名指ししての摘発も、世論工作を断固排除する姿勢をアピールする一環だ。これまでもロシアやイラン、サウジアラビアなどが関与したとするアカウントを削除してきた。20年米大統領選でも介入を許せば批判が再燃する恐れがあり、警戒を崩さない。

20年1月の台湾総統選を控え、中国当局は米国への接近姿勢を強める蔡英文総統の再選を警戒する。情報操作の試みは世界で後を絶たず、SNS各社は対応に苦慮する。

(シリコンバレー=白石武志、香港=木原雄士)

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