2019年9月23日(月)

SIRUP、最新型ソウルを軽やかに歌う

批評
2019/8/25 6:00
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人気上昇中のシンガー・ソングライター、SIRUP(シラップ)が東京で公演した。歌とラップ、ソウルとヒップホップ、日本語と英語が1曲の中で違和感なく溶け合い、ジャンルや言語など、様々な垣根から自由な最新型の音楽を聴かせた。

歌とラップの間を軽やかに往還した=Leo Youlagi撮影

歌とラップの間を軽やかに往還した=Leo Youlagi撮影

2019年1月に「Do Well」がホンダのCMソングに起用され、5月に初のフルアルバム「FEEL GOOD」を発表するなど、この半年余りで一気に注目度が高まった気鋭のアーティストだが、もともと「KYOtaro」の名で歌手として活動を始め、2012年にインディーズでCDデビューしている。「SING」と「RAP」を組み合わせた造語「SIRUP」の名で始動したのは2年前のことだ。

この夜は「PRAYER」で幕を開け、さらに「Why」と新アルバムの曲を畳みかけていった。曲調は1990年代後半のディアンジェロやエリカ・バドゥをはじめ、ネオ・ソウルと呼ばれた一派に通じるソウルミュージックが基本になっている。ネオ・ソウルには70年代のソウルにジャズやファンク、ヒップホップなどの要素が加わっているが、SIRUPの音楽はさらにヒップホップの色を強めた印象だ。

5月に初のフルアルバム「FEEL GOOD」を発表した=Leo Youlagi撮影

5月に初のフルアルバム「FEEL GOOD」を発表した=Leo Youlagi撮影

彼のボーカルはメロディアスな歌唱とビートに乗ったラップの間を自在に往還する。「KYOtaro」名義で自作している歌詞も、日本語と英語が違和感なく同居している。もはやそれは今のJポップの常とう手段ではないかと思われそうだが、彼の場合は取って付けたようなラップではないし、違う言語を無理やり混在させる不自然さも感じさせない。シームレスに、楽々と、難なく往還するのである。そのあたりの心憎いほどの巧みさがSIRUPの特徴であり、武器になっている。

鈴木雅之や久保田利伸をはじめ、黒人音楽志向の優れた先輩ボーカリストは少なくない。SIRUPもその系譜に連なる新星といえるのだが、彼の場合は声の強さや太さ、粘りのあるリズム、アクの強い節回しなどで勝負しようとはしていない。決して無理をせず、ファルセット(裏声)を交えながら、あくまでも自然体でブラックミュージック色の強い曲を歌いこなすのである。その洗練された軽やかさは、これまでの世代にはあまり感じられなかった。それを支えているのは、言葉をリズムに乗せるセンスの良さと確かな音程であろう。

アップテンポの曲もいいのだが、そうした彼の美点は、少しゆったりとした、いわゆるメロウな曲でさらに際立つ。今の都会のムードを反映した気だるいビートである。新アルバムは「Pool」という曲で始まって、つづりを逆さまにした「LOOP」で終わるのだが、そんな言葉遊びの楽しさを随所に盛り込みながら、今の若者のリアルを歌った歌詞も、この気だるいビートによく似合っている。

オールスタンディングの会場は20~30代の男女で満員だったが、もっと上の世代でも、海外のリスナーでも十分に楽しめる音楽だろう。近い将来の大きな飛躍を予感させるライブだった。7月17日、東京・リキッドルーム。

(編集委員 吉田俊宏)

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