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廃業の名チョーク、韓国へ 製法継承で世界から注文

【抱川=共同】国内外の教師らに愛用された日本のチョークのメーカーが2015年に廃業し、ブランドを韓国人の元塾講師に引き継いだ。名品の製法は韓国に渡り、世界中から注文が相次いでいる。元徴用工問題や輸出規制強化で両国の対立が激化する中、新旧の経営者は「日韓はうまくやってほしい」と関係改善を願っている。

韓国北部・京畿道抱川にある文具会社「セジョンモール」の工場では7月、色とりどりのチョークを製造していた。機械油のにおいが漂う中、従業員が工程を見守る。

同社の辛亨錫(シン・ヒョンソク)代表(49)は、塾の数学講師だった十数年前に東京の予備校を見学に訪れた。置いてあったチョークで板書してみると色がきれいで書きやすく、タッチも柔らかくて気に入った。分けてもらったチョークは韓国の塾でも生徒から「見やすい」と好評だった。愛知県春日井市の羽衣文具の製品だった。

「もっと使いたい」と思ったが韓国では手に入らない。自分で輸入販売しようと思い、羽衣文具の社長だった渡部隆康さん(75)に連絡。渡部さんの次女は韓国に留学した経験があり、好意的に契約してくれた。

その後、渡部さんは体調を崩し、後継者もいないため惜しまれつつ廃業した。辛さんは「羽衣ブランドがなくならないよう、自分がつくりたい」と申し出た。渡部さんは取引を通じて信頼していた辛さんに製法を伝授。工場の機械も売り渡し、韓国での生産が始まった。炭酸カルシウムなど原材料は日本から輸入し、渡部さんも太鼓判を押す仕上がりになった。

辛さんは今年に入り、羽衣の品質を世界にPRしようと、米国の会社に依頼して動画を制作。米国の教授らが、高級車になぞらえて「チョークのロールス・ロイスだ」などと称賛する内容で、インターネットで公開した動画の再生回数は約1千万回に上った。動画を見た米国や中国の客から注文が殺到。今年の売り上げ目標は10億ウォン(約8700万円)だ。

韓国では最近、日本政府の輸出規制強化に反発して日本製品の不買運動が起きている。辛さんは「原材料を輸入しているし、羽衣はどう聞いても日本の製品名だから販売量が減るかもしれない」と影響を懸念する。

渡部さんは「(羽衣のチョークが)世の中に残っていてありがたい」と話し、「政治の世界とものづくりの世界は違う。韓国とうまくやっていければいいんじゃないか」と力を込めた。

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