中国、貸出金利下げへ新指標 企業の調達コスト下げ

2019/8/19 23:00
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中国人民銀行は新たな指標金利を公表する

中国人民銀行は新たな指標金利を公表する

【北京=原田逸策】中国人民銀行(中央銀行)は20日、銀行貸し出しの新たな指標となる金利を公表する。優良企業向けの優遇金利との位置づけで、これに取引先の信用度などを加味して融資金利を設定するよう銀行に求める。新金利は大手銀行などの報告を基に算出するため、市場の動向をより反映できると人民銀は期待する。いまの市場金利の低下が貸し出しにも波及し、企業の調達金利を下げる効果を狙う。

■LPRを衣替え

公表するのは最優遇貸出金利(プライムレート、LPR)。LPRそのものは2013年から毎日公表しているが、それを衣替えする。いまのLPRは中国国務院(政府)が市場と関係なく決める貸出基準金利と連動し、形骸化しているからだ。

現在のLPRは基準金利が0.25ポイント下がった15年10月に同じ幅だけ下がり、以後は基準金利と同じくほぼ横ばいで推移している。現状でも大手銀行の報告値を平均して算出するが、各行が基準金利をにらんで報告しているからだ。「LPRが実際の貸し出しに適用されることはない」(銀行関係者)

LPRが基準金利にへばりつく悪弊を断つため、新LPRは基準金利をもとに報告することを認めない。代わりに人民銀行が市場調節として短期資金を大手行に融通する金利を参考にしてもらう。年3.3%と銀行が資金をやり取りする短期金融市場の実勢に近い。これに資金調達コストなどを上乗せした金利を各行に報告させる。

新LPRは毎月20日に公表する。大手10行に加え、新たに地銀、外銀、農村銀行、民間銀行を加えた計18行が報告する。現行の1年物に5年物も追加し、2種類になる。日本の短期、長期のプライムレートに似た存在ともいえる。

人民銀行は銀行に対し、新LPRを参考に貸出金利を決めるよう指導する。いまは基準金利に連動する融資が多いが、満期を迎えて新たに融資する場合に新LPRを適用するよう求める。大手国有企業などは新LPRがそのまま適用されるが、信用力で劣る中小企業は焦げつきのリスクを上乗せして金利が決まる。

■市場動向反映へ

いま貸出金利に大きな影響力を持つのは国務院(政府)が決める基準金利だ。人民銀行は基準金利の力が強すぎることで、金利が貸し出しと市場の2つに分断され、いくら市場金利が下がっても貸出金利が下がりにくい弊害があるとみる。

実際、6月末には市場の翌日物金利は昨年末より1ポイント超下がり、10年ぶりに1%を下回ったが、6月の平均貸出金利は5.66%と昨年12月よりわずかに上昇した。市場金利により近い新LPRを公表することで、貸出金利も下がるよう誘導するのが人民銀行の狙いだ。

最終目的が中小企業の調達金利の下げなので、市場関係者の間では20日の新LPRはいまの基準金利を下回るとの見方が多い。「形を変えた実質的な利下げ」との指摘が出るゆえんだ。

今後、新LPRを適用する融資が増えれば、いまの政策金利である基準金利は徐々に形骸化しそうだ。人民銀行の易綱総裁は5月に「基準金利の公表をやめることも研究する」と発言していた。

中国は表向き、貸し出しは13年、預金は15年に金利規制をなくした。実際はその後も銀行間で、金利競争が起きて経営を圧迫しないよう調整してきた。人民銀行によると「貸出金利の下限を基準金利の0.9倍とする暗黙のルールがある」という。今回の指標金利の公表にはこうした業界慣行を突き崩す狙いもある。

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