東南ア経済、米中摩擦の影濃く タイ4年9カ月ぶり低成長

2019/8/19 19:01
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【バンコク=村松洋兵】東南アジア経済に米中貿易戦争が落とす影の濃さが増している。2019年4~6月期の実質国内総生産(GDP)伸び率は、タイやシンガポールが輸出の減少で落ち込む一方、中国からの生産移転がいち早く進むベトナムは高成長を持続した。各国は政策金利の引き下げなど景気刺激策に取り組むが、通貨安や資本流出の懸念を抱える。

消費にも陰りが出てきた(16日、バンコクで開かれた自動車展示会)=石井理恵撮影

タイが19日発表した4~6月期の実質GDPは前年同期比2.3%増となり、1~3月期(2.8%増)に比べ減速した。4年9カ月ぶりの低成長となる。中国など主要貿易相手国への輸出が減り、生産も振るわなかった。19年の成長率予測は5月に示した3.3~3.8%から、2.7~3.2%に下方修正した。

国家経済社会開発委員会(NESDB)のウィチャヤユット副長官は記者会見で「保護主義の高まりと世界的な経済減速で輸出が減少している」と述べた。中国向け輸出は自動車やコンピューターの部品が落ち込んでおり、1~6月に約10%減少した。

輸出の減少は内需にも影を落とす。6月の新車販売台数は2年半ぶりに前年実績を下回った。トヨタ自動車タイ法人の菅田道信社長は「消費者心理の悪化が顕著になってきた」と指摘する。

貿易戦争の影響を受けやすい産業構造はシンガポールも同様だ。4~6月期の経済成長率は0.1%と10年ぶりの低水準となった。主因はGDPの7%超を占める半導体関連産業の低迷だ。半導体市場の減速に伴い、集積回路やディスクの輸出が前年同期比でそれぞれ32%、39%減少した。

「事業再編に着手している」。シンガポールの地場半導体大手、UTACグループのジョン・ネルソン最高経営責任者(CEO)はリストラを進めていると明かす。

貿易戦争が激しくなるなかで、好調を持続しているのがベトナムだ。4~6月期は6.71%成長となり、東南アジア6カ国で最も高かった。ベトナムは地理的に中国に近く、生産コストも比較的低い。中国に代わる輸出拠点となっており、対米輸出は3割弱増えた。衣料品などの既存工場の稼働率が上がっており、高炉や製油所もほぼフル稼働が続いている。

シャープは20年度にベトナムで新工場を稼働し、中国で製造している米国向けの車載用ディスプレーの移管を決めた。中国からの生産移転を計画する企業の新工場は1~2年後に相次いで稼働するとみられ、ベトナム経済の追い風となる。

その他の国はまだ米中貿易戦争の影響が比較的少ない。マレーシアは4~6月期の経済成長率が4.9%と、1~3月期(4.5%増)から持ち直した。輸出が伸び悩んだものの個人消費が7.8%増と好調だった。マレーシア中央銀行は「米国が全ての中国製品に制裁関税をかけてもGDPへの影響は軽微」とするが、今後輸出が低迷すれば堅調な個人消費に水を差しかねない。

インドネシアは5.05%成長で1~3月期から横ばいだった。東南アジア最大の2億6000万人超の人口を抱え、内需が占める割合が大きいためだ。それでも世界的な経済減速で主要輸出品の石炭やパーム油の価格が下落し、個人消費に停滞感が出てきている。

フィリピンは17四半期ぶり低水準の5.5%成長となったが、主因は政府支出の遅れだ。政府の基幹インフラ整備事業75件のうち着工したのは11件にとどまる。ドミンゲス財務相は「予算執行を急ぎ、19年後半の成長を押し上げたい」としており、年間で6~7%成長の達成を目指す考えだ。

アジア開発銀行(ADB)が集計したベトナムを除く東南アジア主要5カ国の4~6月期のGDP伸び率の平均値は前年同期比4%だった。1~3月期(4.2%)に比べ減速し、地域全体で不透明感が高まっている。

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