JR「大回り乗車」 切符200円で関西巡る748キロの旅
とことん調査隊

関西タイムライン
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2019/8/20 7:01
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「缶ビール1本分の運賃で1日中鉄道の旅を楽しもう」。一見むちゃな挑戦だが、実は合法的にできる。カラクリは「大回り乗車」と呼ばれるJRの特例だ。東京や大阪などの大都市近郊区間では一定の条件を満たせば、乗車した経路に関係なく、改札を入った駅と出た駅を結ぶ最も安い経路の運賃で乗車できる。JR西日本エリアで、できるだけ長く乗車できるルートを探し、実際に乗車してみた。

大阪の近郊区間は三重県を含む2府5県にまたがる。特例の条件は(1)普通乗車券か回数券を使う(2)同じ経路を重複したり同じ駅を2度通ったりしない(3)途中下車しない――など。路線図を見ると、肝は尼崎駅だ。兵庫県を出入りするには必ず同駅を通過する。条件(2)を守るには、尼崎の隣の塚口、塚本、立花、加島の中から始発駅と終着駅を選ぶ必要がある。駅間距離や運行ダイヤを考慮すると、塚口駅を始発、塚本駅を終着とするルートが最長になりそうだ。

8月8日に大回り乗車を決行した。塚口で6時05分発の福知山線に乗り、谷川まで北上。トンネルを抜けるごとに、車窓からは渓谷や田園風景が広がった。谷川で加古川線に乗り換え。東経135度と北緯35度が交わることにちなんだ日本へそ公園などを通過し、1時間半余りかけて加古川まで南下する。加古川からは神戸線の新快速で尼崎へ。須磨海岸周辺で車窓から穏やかに輝く瀬戸内海が見えた。

10時07分に尼崎着。学研都市線に乗り換える。スマホの乗り換え案内は10時24分発を示したが、速足で歩くと09分発に乗れた。大阪府に入り鴫野(しぎの)へ、3月に全線開業したおおさか東線に乗り、45分に新大阪に着いた。

次に乗る京都線は11時20分発。尼崎の乗り換えを急いだおかげで余裕ができたので、駅構内の売店を物色。長旅に備え、焼き肉弁当を買った。

新大阪で乗った新快速は京都線経由で湖西線に入り、滋賀県北部の近江塩津まで1本だ。近江塩津着は5分遅れたが、予定通り草津方面に向かう琵琶湖線に乗り継げた。琵琶湖や工業地帯を眺め、草津に14時22分着。三重県伊賀市の柘植(つげ)へ向かう草津線への乗り換えまでは35分。ホームで遅めの昼食をとる。琵琶湖の花火大会のためか、浴衣姿の若者が多かった。

この後は短い時間での乗り継ぎが続く。柘植では2分で関西本線へ。木津川が流れる山間部の景色は風光明媚(めいび)だが、各地で猛暑日や真夏日を記録したこの日の車内はサウナ状態。乗客も多く、汗をぬぐう人が目立った。

列車は再び京都府に入り、加茂と木津を経由して学研都市線で大阪府の放出(はなてん)へ。放出から大和路線に入り、奈良着は18時35分。ここからは奈良県内を走る万葉まほろば線だ。京終(きょうばて)、帯解(おびとけ)と難読だが歴史を感じる駅名が並ぶ。乗車中に日没を迎え、高田駅からは和歌山線へ。旧国鉄時代から活躍した105系の車両は今秋までに新型車両と入れ替えるそうだ。隅田から和歌山県に入り、7府県を制覇した達成感に浸る。

和歌山着は22時すぎ。夕食がまだだったが、売店は閉店後。高田以降の乗り換え駅には売店がなかったので、その前に調達しておくべきだった。空腹を抱えたまま大阪方面へ向かう電車に乗り込んだ。阪和線で天王寺、環状線の外回りで大阪、神戸線に乗り換え、ゴールの塚本に着いたのは日付が変わって9日0時23分。塚口―塚本間の200円の切符に印を押してもらい、大回り乗車の旅を終えた。

計算すると営業距離にして748キロメートル余。289駅を通った。関西の大回り乗車の最長距離ではないだろうか。1日中電車に乗って、鉄道網の発達やダイヤの正確性が印象に残った。ハードな旅だが、残り少ない夏休みの思い出にいかがだろう。

(大沢薫)

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