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「私は私のままだ」 車いす陸上に夢中、障害考えない
IPC教育委員・マセソン美季さん(3)

Tokyo2020
2019/8/28 6:00
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教育にパラリンピックを取り入れようと奔走する、国際パラリンピック委員会(IPC)教育委員のマセソン美季さん(46)。半生をたどる連載の第3回は、交通事故で車いすを使うようになってからパラリンピックに出場するまでを振り返る。

◇   ◇   ◇

 車いすに乗る現実を受け入れられず、周囲の偏見にも苦しんだ。転機は、入院中に体育館で車いすバスケットボールをしている人たちを見かけたことだった。

すごい! かっこいい! と思いました。けがするまで「車いすはかわいそう」とか「大変そう」というイメージが、自分にもあったんだと思います。そもそも障害について考えたことがありませんでしたから。

退院後は車いす陸上に取り組んだ(写真は1996年の大分国際車いすマラソン)

退院後は車いす陸上に取り組んだ(写真は1996年の大分国際車いすマラソン)

車いすに乗っている人を、そうしたポジティブな言葉で表現するということが、私にとっては斬新でした。自分のなかで安心したというか、「ああ、こういうのもありなんだ」と思ったことは、すごく覚えています。

「車いすマラソンの記録は普通のマラソンより速い」と聞き、車いすで陸上競技を始めました。初めて走った400メートルがなんと長かったことか。立って走るより速いスピードで、風を感じたかったのです。

異例でしたが、入院中に自動車免許も取りました。「退院してすぐ活動できるように、教習所に通わせてください」と先生を説得して、外出許可をとりました。

1年半の入院生活が終わると大学に復学した。同時に陸上競技に本格的に取り組むため、経験のある指導者と車いすの仲間たちがいるクラブに入った。

大学には温かく迎えてもらいましたが、車いすに乗っているのは私だけだったし、エレベーターなどの環境も整っていなかったので、障害を意識させられることもたくさんありました。

でも走っているときは、そんなことを考えずにすみます。速くなりたい、強くなりたい、それにはどうしたらいいんだろうと、昔と同じ思考回路でいられるのです。私のコアのアイデンティティーは変わっていない、私は私のままなんだと再発見できました。

練習を重ねるとともに記録も伸びて、いつしか夢は世界、パラリンピックに向かうようになりました。

1998年の長野冬季パラに向け、有望な選手の発掘が始まっていた。アイススレッジ・スピードレースの練習を見に来ないか、と人づてに誘われる。スケート刃がついたそりに乗って両手でストックを突いて滑る競技で、なじみはなかった。

とにかくリンクが寒くて、早く切り上げたかったのですが帰るわけにもいきません。体を温めたいと思い、「私にもやらせてください」と監督に頼みました。やってみたら全然できないんです。子供のときからどんなスポーツもさほど練習しないでそこそこできたのに、まっすぐ滑ることさえできません。悔しくて必死に練習し、どうにか前に進めるようになったころ、調子に乗ってみんなの前でぐんぐんスピードを上げました。そうしたら「転べ、転べ」と言われて。止まり方を知らなかった私は、リンクの先のアスファルトに乗り上げました。

そりの刃はぼろぼろ。監督から「この刃がいくらするか知っているか? もう、やめるわけにいかないぞ」と言われて、思わず「はい」と答えていました。

(高橋圭介)

 マセソン美季さんの半生を5回に分けて連載しました。
(1)パラ教育で偏見なくす 元金メダリスト、子供に託す夢
(2)交通事故で車いすに 障害はかわいそう?偏見に苦しむ
(4)長野パラで知った夢の力 金3つ獲得、教職は諦める
(5)「障害」は社会が作り出す 米国留学で感じた内外格差

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