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長野パラで知った夢の力 金3つ獲得、教職は諦める
IPC教育委員・マセソン美季さん(4)

Tokyo2020
2019/8/29 6:00
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教育にパラリンピックを取り入れようと奔走する、国際パラリンピック委員会(IPC)教育委員のマセソン美季さん(46)。半生をたどる連載の4回目は、長野冬季大会に出場して金メダルを獲得する話だ。遠征で初めて訪れた海外では、障害について新たな気付きも生まれた。

◇   ◇   ◇

 厳しい練習のかいあって、長野冬季パラリンピックのアイススレッジ・スピードレース代表に選ばれた。500メートル、1000メートル、1500メートルの3種目で金メダルをとった。

最初のレースは100メートル、最も得意な種目でした。子供のころから緊張とは無縁だったはずなのに、スタート地点に立った瞬間に頭のなかが真っ白になりました。気がついたらゴールしていて、銀メダルでした。

長野パラリンピックでは3つの金メダルを獲得した(1998年3月)=共同

長野パラリンピックでは3つの金メダルを獲得した(1998年3月)=共同

表彰式に向かうときは「これで、お世話になった方に報告できる」と考えていました。ところが金をとった隣のノルウェー選手が私を見て、にんまり笑ったのです。くそーっという悔しさがわき上がってきました。

その日は500メートルのレースもありました。ほかの選手はストレッチしたり音楽を聴いたりして時間を過ごしていましたが、私は昼寝をしました。慌ててトレーナーが起こしに来るまで、ぐっすり眠ったのです。

夢のなかで、私は理想のレースをして金メダルを取っていました。だから目が覚めたときには、「絶対に大丈夫」という自信があって、とても落ち着いてレースに臨めました。そして、思い描いた通りの滑りで金メダルをとることができたのです。

振り返ってみれば、以前は体育の先生になるという夢がありました。けがをしてからは夢を見つけられない時期もありましたが、パラに出る夢ができてからは、何があっても頑張ろうという気持ちになれました。夢の力はすごく大きいですし、「大きすぎる夢なんてない」と思えたことがうれしかったです。

 長野パラの年に東京学芸大を卒業。翌年、米イリノイ州立大の大学院に留学した。

日本で教育実習をして、体育教師の免状もとりました。でも周囲から「車いすだと採用してもらえない」と言われて、私も「そうなんだ、仕方ない」とあきらめました。留学は親に反対されないように先回りして、自分で奨学金を探しました。

イリノイ州立大はパラスポーツの最先端にあります。そこで指導法を学んで、日本の障害のある子供たちに教えたいと思いました。日本では「危ない」とか「無理」とか言って、スポーツの機会を奪っているケースがあります。専門家になれば、子供たちを任せてもらえます。

同時に海外に自分の身を置いて、広く世界を見たり感じたりしたいという気持ちもありました。長野パラの前、遠征で初めて海外を訪れ、日本との違いを肌で感じていたからです。

たとえば北欧ではバリアフリーどころか、雪や氷によるバリアばかりで英語も通じません。でも私が困っているときには周囲の人が自然に近づいてきて、「じゃあね」とさらっといなくなる。助けてもらう側は心の負担がまったくなくて、すごく居心地がいいんです。

日本では「困っている」と意思表示して、初めて助けてもらえます。「すみません」という言葉が口癖になるほどです。障害は私にあるのではなく、社会がつくり出しているのではないか。そんな思いは、米国留学で確信に変わりました。

(高橋圭介)

 マセソン美季さんの半生を5回に分けて連載しました。
(1)パラ教育で偏見なくす 元金メダリスト、子供に託す夢
(2)交通事故で車いすに 障害はかわいそう?偏見に苦しむ
(3)「私は私のままだ」 車いす陸上に夢中、障害考えない
(5)「障害」は社会が作り出す 米国留学で感じた内外格差

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